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税金相談室

2007年8月25日 22:00:00

国境を越える贈与

Inage Hawaii

質問:日本の祖父が米国に住む米国籍の孫に財産を贈与すること考えています。この場合の税金は? 答え日本と米国の国境を越えて財産を贈与する場合、贈与した者(贈与者)および贈与を受けた者(受贈者)の居住地と財産の所在地に応じて、両国、または、いずれかの国の贈与税が発生する可能性があります。ここでは日本在住の日本国籍保持者である祖父が、米国在住の米国籍保持者である孫に贈与を贈る場合の日本と米国の贈与税について検討します。 ●日本の贈与税 贈与税は課税の対象期間を1月1日から同年12月31日までとして区切られており、その間に贈与を受けた合計額から基礎控除額110万円を差し引いた課税金額に対して、10%~50%までの累進税率を掛け合わせて税額を計算する仕組みとなっています。贈与税の申告期間と納税時期は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間です。 国内財産の贈与:銀行送金の場合、祖父名義の日本の銀行口座から孫の米国銀行口座に向けて資金が振り込まれた時点で、孫が祖父の日本国内財産の贈与を受け取ったことになり、日本の贈与税の対象となります。受贈者である米国居住の孫が贈与税の申告納税義務を日本政府に対して負います。日本にある不動産、株、債券などの贈与を受けた場合も、日本国内財産が関わっているため、日本の贈与税が課税されます。 国外財産の贈与:国外財産の贈与は、次の三条件を満たすと日本の贈与税が非課税となります。 1.受贈者が日本国内に住所を有していないこと。 2.受贈者が日本国籍を有していないこと。 3.日本国籍の場合、受贈者および贈与者の両方またはいずれかが、5年超日本の非居住者であること。 国外財産が課税対象とならないのは、贈与者と受贈者の両方が日本国籍保持者であり、かつ、過去5年以上にわたって共に日本国外に居住している場合、および、受贈者が外国籍保持者である場合の2つのケースです。したがって、祖父が米国内に所有している銀行預金や不動産、米国法人の株、米国発行の債券などの国外資産を、米国籍保持者である米国在住の孫に贈与する場合、日本の贈与税は課されないことになります。日本居住者である親に経済的に依存している米国籍の子(扶養家族)が贈与を受けた場合、その扶養家族の生活の本拠は米国ではなく日本と見なされ、無税贈与は認められません。 二重国籍:米国籍と日本国籍を同時に有する、いわゆる二重国籍保持者は日本の無税贈与の適用を受けることはできません。すなわち、米国で生まれたため生地主義により米国籍があり同時に日本国籍を留保した者や22歳に達したのにもかかわらず国籍選択を行なっていない者、米国籍取得後、日本国籍の離脱をしていない者などは、二重国籍であり米国籍と同時に日本国籍があるため、国外財産の移転に日本の贈与税が課されます。適格贈与であることを示すため、財産の移転先が日本国籍保持者でないことや日本国籍保持者の扶養家族でないことを証明する証拠書類の提出を用意しておく必要があります。 ●米国の贈与税 贈与相手一人につき13,000ドル(2009年)を超える贈与は連邦贈与税(18%~45%)の対象となります。申告期限は、贈与が発生した年の翌年の4月15日です。 国外財産の贈与:米国では、日本と逆に贈与者が贈与税の納税義務を負います。非居住外国人による米国外財産の贈与は、受贈者の国籍や居住地に関わりなく、また財産の種類や金額にも関わりなく、連邦贈与税の対象外です。税法上の非居住外国人が関わる場合に課税対象となるのは、米国内財産の贈与だけに限られます。日本からの銀行送金、日本の不動産、株、債券などの移転に課税されるのは日本だけであり、米国の贈与税は課税されません。 国内財産の贈与:米国内財産の移転は連邦贈与税が課される可能性があります。ただし、納税義務者である贈与者が非居住外国人である場合にだけ考慮される財産の概念が適用されます。すなわち、移転される財産を有形資産と無形資産とに分類し、有形資産であれば贈与税の課税対象となり、無形資産であれば課税対象外となります。 有形資産(課税):不動産、現金、自動車、宝石貴金属、美術品など。 無形資産(非課税):株、債券、有価証券、手形、著作権など。 以上から、日本の祖父が保有する米国資産を、株、財務省証券などの「無形資産」の形にして移転すれば、日米両国の贈与税の対象とならず、米国籍の孫に対する合法的な無税贈与が達成できます。

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