会計相談室
2010年4月14日 13:00:00
収益の計上基準
Q. 会計上の収益計上とはどのようなことをいうのでしょうか?
A. ビジネスの世界では、商品やサービスの販売において、さまざまな売り上げ方法が開発されてきています。これらのうちで最もシンプルな取引方法は、もちろんキャッシュ取引です。ビジネスの世界でのさまざまな売り上げ方法の開発、例えば、信用取引(掛け売り)、さまざまな支払いプランの提供、商品の留め置きやギフトカードの発行などを行ってきましたが、これらは、もともとシンプルなキャッシュ取引を増やすために試みられたものにほかなりません。米国会計基準には純利益(Net Income)や収益(Revenue)の定義はあっても売り上げ(Sales)や収入(Income)の定義はありません。
収益は、2つの条件がそろったときに認識されます。それは、実現している、または、実現可能であることと、稼いだことです。実現とは製品、商品またはサービスがキャッシュかキャッシュ化できる権利と交換されることであり、実現可能とは、キャッシュかキャッシュ化できる権利と交換可能な状態になることです。よって、収益は実現するか実現可能な状態になるまで認識されません。稼いだこととは、製品または商品を引き渡したり、サービスを提供するなど、主たる営業取引のほとんどを完了させることで、収益を得る権利を得た状態をいます。収益は稼ぐまで認識することはできません。収益の認識は売り上げとは異なるため、売り上げの時期と収益の認識には、ズレが生じる可能性があり得ます。米国会計基準では、収益認識の2つの条件を満たす場合として、以下のようなケースを提示しています。
1. 通常、お客様に商品または製品が出荷されることやサービスが提供されることで、2つの条件は満たされます。収益は、売り上げ時(配達時)に認識されます。
2. 売り上げや現金回収が、生産や配達よりも早く起きた場合、収益は生産や配達時に認識されます。
3. 生産が完了する前に製品が契約されていた場合、合理的な予測と信頼できる進捗度に基づいた生産高比例法によって収益は認識されます。
4. 時間の経過に基づいてサービスが提供される場合(例えば利息や家賃)、時間の経過に基づいて収益を認識します。
5. もしも、製品が生産された順から売れていく場合(特殊な農産物や非常に貴重な金属など)、生産完了時点や値段が変更になった時点で、収益は認識されます。
6. 製品やサービスが非貨幣性資産(現金や現金等価物ではないもの)と交換された場合、何かしらほかの資産が獲得され、取引が完了した時点で認識されます。この場合、受け取った資産の公正価値評価に合理的な上限を測定をする必要があります。バーター取引がこの典型例ですが、バーター取引では、入手した資産またはサービスが直ちに現金化できる場合を除いて、時価が入手した資産の取得原価を超えることはないため、帳簿価額で計上する必要があります。広告などのサービスの場合には通常$0になります。
7. もしも、製品やサービスの対価として獲得した資産の回収可能性が疑わしい場合には、収益は現金獲得時に認識されます。証券取引法委員会(SEC)発行のSAB TOPIC 13では、収益の認識をする2つの条件を満たすためには、次の4つの条件を満たす必要があるとしてます。
① 取引自体に説得力のある証拠が存在していること。例えば、契約書や請求書の存在です。たとえ物品が仕入先に届いていたとしても、契約書にサインがなければ、収益計上できないケースもあります。
② 配達が行われた、または、サービスが提供された事実。購入者がタイトルを入手し、リスクを負い、所有権を獲得した場合に配達が行われたと考えます。購入者の検収に不確実性がある場合には、収益の計上はできません。
③ 販売者から購入者に対する価格が決定されたか決定可能であること。もしも、返品条件があると一般的に価格は固定できなくなります。
④ 回収可能性が合理的に確認できること。先の①から③の要件が満たされてなければ、通常回収可能性に問題が生じます。条件を満たしたとしても、回収期間が通常取引よりも長期になされ、回収可能性が分からない場合には、現金獲得時に収益を認識する可能性があります。この場合の収益計上方法には割賦基準や原価回収基準があります。
上記にあげた以外の特殊な収益認識売り上げとしては、返品条件付売上、リース、フランチャイズ、借入仲介、音楽業界、ケーブルTV,不動産販売、ソフトウエアなど多数ありますが、それぞれ会計基準で解説されています。
齊藤幸喜