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税金相談室

2001年4月20日 22:00:00

双方居住者

Inage Hawaii

日本の税法上、日本の居住者であり、同時にアメリカの税法上もアメリカの居住者であるという場合があります。このように同一人物が2カ国両方で居住者になることを双方居住者(Dual Resident)と呼びます。 双方居住者に該当するケースは、日本の会社に籍を置いたまま出張の形で日本とアメリカを往復していて、年間のアメリカ滞在日数が合計で183日を超えるという場合です。 家族、家、住所、所属する会社が日本にあって、本人が日本の居住者でありながら、アメリカの税法規定によって双方居住者と見なされる場合、アメリカにおける納税はどのようにするのが正しいか検討してみます。 日米租税条約第3条は、アメリカと日本の両国において双方居住者になった場合、解決を与える条項です。すなわち、双方居住者となった個人は、次のいずれかを適用して、より密接にかかわりがある方の国の居住者となります。 (1)恒久的住居の有無:双方居住者は本人の「恒久的住居」が所在する国の居住者とする。「恒久的住居」は、例えば、家族などが継続的に居住している住居のことであり、恒久性を主眼として判定される。商用、観光などを目的とし、一時的な滞在をベースとした住居はこれに該当しない。 (2)重要な利害関係の中心の有無:恒久的住居が両国に所在したり、またはどちらの国にも所在しない場合には、「重要な利害関係の中心」が所在する国に居住性があると判定される。「重要な利害関係の中心」とは、人的および経済的関係が最も密接であり、家族、職業、政治的・文化的活動の場所、本人の事業または勤務の行われる場所、本人の主な資産の所在する場所を指す。 (3)常用の住居の有無:重要な利害関係の中心となる場所がいずれの国にも存在する場合には、「常用の住居」が所在する国の居住者とする。「常用の住居」とは、頻繁にその場所で起居する一定の寝食の場所、または常用の宿泊所を指す。 (4)国籍の有無:いずれの国にも「常用の住居」があって、なおその判定ができない場合は、本人が国籍を有する国の居住者とする。 (5)両国の協議:本人が日米両国の二重国籍者、またはどちらの国の国籍も有しない場合は、日米両国の税務当局間の協議により、どちらか一方の国の居住者とする。 この条項を適用すれば、日本の居住者がアメリカ出張での往来で、たまたまアメリカ滞在日数が183日を超えても、アメリカの居住者にはなりません。非居住者として申告すればよいことになります。 つまり、アメリカ源泉所得および日本源泉所得を含めた全世界所得が課税対象となるのではなく、アメリカ源泉所得だけが課税対象となります。 アメリカ源泉所得とは、給与などの役務所得(勤労所得)のうちアメリカ滞在期間に対応する部分のことです。これは、年間の給与総額を、アメリカ滞在日数が365日に占める割合で比例按分した金額です。利子、配当などの不労所得(投資所得)は、勤務用役と無関係なので報告義務はありません。 この際、米国の税法規定上は居住者であっても、日米租税条約第3条を優先させて非居住者として申告したことをフォーム8833様式で開示します。さらに、申告書フォーム1040NRに添付提出をする義務があります。 KPMG特別顧問 米国公認会計士 大島襄

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