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会計相談室

2008年2月29日 14:00:00

包括利益について

Inage Hawaii

Q. Comprehensive Incomeについて教えてください。


A. 包括利益(Comprehensive Income)は、全ての利益という意味で、損益計算書上で計上される「当期利益(Net Income)」と、損益計算書には計上されない「その他の包括利益(Other Comprehensive Income)」の合計です。


損益計算書上の当期利益は、会社のある一定期間の経営成績を表します。包括利益は、純資産(資本の部)の増減要素のうち、株主取引(増資や配当)以外の取引すべての増減を指すことになります。Comprehensive income (包括的利益)を報告する目的は、Transactions with owners (株主との取引)を除く、期間中に認識された全てのTransactions (取引)、および全てのEconomic events (経済的出来事)の結果としてのChanges in equity (株主持分=純資産の増減)を表示することによって、Overall Enterprise Performance (企業全体の成績)を測定し開示することにあります。 


本稿では、その他の包括利益を中心に解説します。その他の包括利益は、未実現利益が主な構成要素です。一般的な例をあげると、外貨預金や株の含み損益です。外貨預金を保有する場合、現在の相場と比較すると含み損や益が生じることがあります。


また、株などの有価証券を保有する場合も同様です。私たちが、この含み損益を実際の損益として認識するのは、日本円建ての外貨預金を米ドルに両替した時や実際に株を売却した時です。個人の場合はそれで問題ないのですが、会計上は、未実現の含み損益を売却するまで把握しないわけにはいきません。


なぜならば、会社が大きな含み損失や利益を抱えているのにそれらを開示しなければ、投資家の判断を大きく狂わせる可能性があるからです。 その他の包括利益には、以下のようなものが考えられます。


■ 為替換算調整額(Foreign currency translation adjustments)

■ 外国企業への純投資に対する経済的ヘッジから生じる為替差損益

■ 資本取引に極めて近い長期投資的要素の内部取引から生じる為替差損益

■ キャッシュフロー・ヘッジを適用したデリバティブの公正価値の変動額

■ 年金会計における追加最小負債の純損失(Minimum pension liability adjustment)

■ 売却可能有価証券の未実現保有損益(Unrealized gains and losses on a available-for-sale investments )

■ 償還まで保有する目的の有価証券から売却可能有価証券に変更した場合に生じる未実現保有損益

■ 過去に減損処理された売却可能有価証券について、その後発生した公正価値の増減額 


これらは、主に外国為替が決済される前の未実現の外国為替差損益や有価証券の含み損益です。包括利益は、財務諸表の構成要素の貸借対照表、損益計算書およびキャッシュフロー計算書と同じ位置づけで、とても重要な項目です。包括利益の報告様式には、① 損益計算書の中で最後に表示する方法、② 包括利益計算書で報告する方法、③ 株主持分変動計算書で表示する方法があります。


その他の包括利益については、税効果と総額表示するか税効果を純額表示し、税額を記載する必要があります。その他の包括利益は、資本の部に資本、資本剰余金および利益剰余金とは分離して、その他の包括利益累計額(Accumulated Other Comprehensive Income)として表示しなければなりません。また、その内訳を貸借対照表上または注記で開示します。


注意事項は、過去に計上されていたその他の包括利益が、ある期に実現し当期損益の一部として損益計算書に計上された場合、損益の二重計上を排除する必要があることです。例えば、売却可能有価証券を売却した場合です。売却可能有価証券の保有期間中の未実現損益は、その他の包括利益として計上されていますが、売却と同時に未実現損益が実現します。この場合には、当期純利益と過去に計上されていたその他の包括利益が二重計上されないように、その他の包括利益を振替調整します。


米国公認会計士

大島斉藤会計事務所

齊藤幸喜

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