会計相談室
2022年1月28日 14:00:00
公正価値オプション
「譲謙(ゆずけん)さん、以前に金融資産の表示方法について教えてもらったんじゃが、友達が金融資産は時価で評価して損益計上してもいいんだよと言っておったので、本当かどうか教えてくれんか?」会社経営者の鬣(たてがみ)は会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称、譲謙)におもむろに聞いた。「それは公正価値オプションというものです。」「混線をしているオプション、とは何だ?」「こうせいかちオプションです。先日お話した金融資産、金融負債に適用できます。しかも、それぞれの資産負債の個別の項目ごとに別々に適用できます。」「なんかピンとこないんじゃが。何か利点でもあるのか?」「投資資産で時価が容易にわかるような上場会社の株式のようなものの場合には便利です。しかし、上場会社の株式は持分割合が非常に低いはずなので、もともと時価評価が求められています。したがって、上場会社以外の投資資産で、配当などよりも将来高値で売り抜けることを主な目的としているものは、この基準はぴったり合うことになります。」「そうか、わしも実は風力発電の会社に投資しているんじゃ。なんと言っても、これからは再生可能エネルギーの時代じゃからな。」「そのような投資は、持分法か時価評価になると思いますが、公正価値オプション選択も可能です。」「なんかよくわからんが、何が違うんじゃ?公正価値オプションは非常にシンプルなのがよい点です。投資先が時価を知らせてくれるなら時価の変動を損益に計上するだけです。持分法の場合には投資先の損益のうち、自分の持分を計算してから計上しなければなりません。しかしながら、投資先が時価評価で損益計上している場合には、投資初期の取得付随費用を取得原価として載せていない限り公正価値オプションと同じ結果になります。持分法にならないような割合の投資は時価評価をしなければなりませんが、これは公正価値オプションと同じ結果になります。」「ということは、持分法を採用している場合で、その投資先が時価で評価していないときに公正価値オプションは利用価値があるということじゃな。」「その通りです。しかし、そのような場合には投資先の時価を計算することが難しいと思います。結局、特定の投資先や金融資産、金融負債をどうしても時価で換算し評価して把握しておきたいという場合にのみ適用する意味が出てくると思います。たとえば、長期貸付金や長期借入金を売り買いしている場合などです。」「それじゃ、わしにとっては公正価値オプションなんてのはあまり意味がないものじゃな。今回は公正価値オプションはやめよう。」「そうなんです。現在の会計では、結果的にほとんどの金融資産が時価評価されているので、取得費用の取り扱いさえ気にしなければ、この基準を採用する意味はなく、特定の業種以外あまり存在意義はありません。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saikos.com):齊藤幸喜