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会計相談室

2013年3月7日 14:00:00

儲けはキャッシュの増加にあらず?損益計算書の不思議

Inage Hawaii

 「鬣(たてがみ)さん、それでは、次に損益計算書の勉強をしましょう。」


会計コンサルタントの譲謙(ゆずけん)は言った。



「鬣さん、損益計算書は何かご存知ですか?」



「それは、会社の儲けを表すものだろう。」



「その通りです。会社の儲けを段階的に表しています。まず、売上高と売上原価(売上げた商品の原価)を計上し、その差額である会社の本源的な儲けを示す売上総利益を計算します。さらにそこから、家賃や給料などの月々の経費(販売費や一般管理費といいます)を差し引いて、本業からの儲けを示す営業利益を算出します。次に、営業利益から受取利息や支払利息(営業外損益といいます)を増減させると会社全体の税引き前の儲けを示す経常利益が算出されます。そこから税金を差し引くと最終的な会社の儲けである純利益になります。しかしながら、これらはキャッシュの純増減を示すものではありません。」



「何、儲けはキャッシュの増えた分ではないというのか?それじゃ、何なんだ?」



「残念ながら、現代の会計では、損益計算書では、利益を計算するのですが、その利益は、増加したキャッシュを計算していません。利益がキャッシュと結びつかないのは、利益が計算される時点とキャッシュが増減する時点に時間差があるためです。例えば、売上げが上がったのにキャッシュの回収が1ヵ月後のような場合です。しかしながら、鬣さんのいだく疑問点はもっともで、経営者に役立つ損益計算書の利益は、キャッシュと結びつくものではなければなりません。そのためには、利益とキャッシュの時間差を限りなくなくすることです。また、キャッシュの裏づけのない利益などは利益と考えないことです。この場合の利益は、リアルタイムのキャッシュではなくても、近時間差のキャッシュになります。」



「具体的にいうと何だ?」



「利益は1ヶ月から1年以内にキャッシュ化される儲けをいうことになります。


損益計算書


売上 $ 1,000 

売上原価 $ 700 

売上総利益 $ 300 

販売費および一般管理費 $ 195 

営業利益 $ 105 

営業外損益 $ 5 

経常利益 $ 100 

法人税 $ 40 

純利益 $ 60  





<解説>キャッシュベースを裏づけにする会計では、全てにおいて近未来の回収可能性が重要になります。したがって、回収可能性がない相手先への販売は、売上げに計上できません。一方、例え、何の欠陥のない商品でも近い将来にキャッシュ化されない場合には費用計上されます。例えば、見積もり間違いをして大量に購入してしまった長期滞留在庫品です。また、売掛金のうち回収可能性がない場合にも費用計上する必要があります。 

 



米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜

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