会計相談室
2024年9月27日 13:00:00
優先株式
「譲謙(ゆずけん)さん、今度うちで転換オプション付きの優先株式を発行することになったんじゃが、会計処理方法を教えてくれないか?」会社経営者の鬣(たてがみ)が会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称、譲謙)におもむろに聞いた。
「優先株式とは普通株式の株主よりも何かが優先されている株のことです。例えば、固定年率の配当が累積でつくことがあります。また、一定の期間以内に出資額自体と累積配当金を償還して支払ってもらう権利がついています。」
「それじゃ、優先株はいいことだらけじゃないか?」
「ただ、普通株にはある議決権が優先株にはありません。会社の資金調達方法には負債と資本に大きく分かれます。負債は借入金で利息の支払いや返済の義務があります。一方、資本には配当の支払いや資本金を払い戻す義務はありません。」
「それじゃ、優先株は資本か?」
「いえ、優先株式には先に述べたように負債と資本の両方の性格をもつものが多いため、簡単に結論付けられません。」
「大体、なんで、優先株なんぞを発行するんだ?」
「転換オプション付きの償還優先株の場合には、株券保有者は、会社の業績がよくて上場でもすれば、普通株に転換して売り抜けることができますし、業績がそれほどでもなければ、持ち続けて配当を一定割合でもらうことができるからです。また、償還権を行使すれば投資したお金を回収することもできます。」
「確かうちの優先株には一定の基準日に償還権をつけていたな。」
「そのような優先株式は強制償還優先株式(Mandatory Redeemable Preferred Stock)と呼ばれ、アメリカでは負債として計上されます。」
「(優先)株式なのに負債とは不思議じゃのう。」
「そもそも償還しなければならないということは返済と同じですので、資本としての性格よりも負債としての性格の方が強いという事です。」
「それじゃ、配当は利息計上か?」
「いえ、アメリカでは配当金として利益剰余金から控除されます。」
「利益剰余金がなかったら、どうするんじゃ?」
「資本剰余金から控除します。」
「未払い配当はどうするのじゃ?」
「未払い配当は負債の増加になります。」
「それじゃ、転換オプションはどうじゃ?」
「優先株式と経済的な特性が密接に結びついていれば、同じく負債計上になります。」
「よーくわかった。ありがとう。ところで、日本や国際会計基準でも処理は同じか?」
「いえ、それぞれの国が別々の会計処理を行っています。」
「どうなっているんじゃ?」
「日本は資本扱いです。配当の扱いはアメリカと同じ利益処分です。」
「国際会計基準ではどうじゃ?」
「国際会計基準ではアメリカと同じく負債扱いです。そして、配当は利息扱いとなっています。」
「ほう、それぞれのお国と地域で考え方は異なるもんじゃのう。ありがとう。ためになった。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜