会計相談室
2023年2月6日 14:00:00
債務免除を受けた際の米国課税関係
Q:債務免除を受けた際の米国課税関係について教えてください。
A:米国内国歳入法61条では、債務免状益は一般的に課税所得に含まれるとされています。ただし、米国内国歳入法108条のもと、ある一定の条件を満たした債務免除益は、当該年度の課税所得からら除外されます。その条件は次の通りです:
1. 破産手続き上、裁判所が認めた債務免除の場合
2. 債務者(納税者)が債務超過の場合
3. 適格農業債務の場合
4. 適格不動産事業債務(納税者が法人の場合は適用不可)の場合
5. 納税者の主居住家屋にに関わる住宅ローンの場合
米国内国歳入法108条を適用し債務免除益を課税所得から除外した場合は、様式982号を債務免除年度の所得申告書に添付し、除外額等の開示が必要となります。上述1-3の条件で債務免除益が除外された場合は、債務者は、除外相当額を課税所得計算上の減産項目から減額する必要があります。これらの減産項目は次の通りで、納税者が選択しない限り、上から順番に減額されることになります。
1. 繰り越し欠損金
2. 繰り越し一般税控除
3. 繰り越しミニマム税
4. 繰り越しキャピタルロス
5. 資産取得額
6. 繰り越しパッシブアクティビティロス
7. 繰り越し外国税控除
選択により、減価償却可能な資産の取得額の減額を最初に行うこともできます。
課税所得計算の際の減算項目は、債務免除が発生した年の課税所得計算終了後に減額されます。もし、債務免除益が起こった年に欠損金が発生した場合は、当該年度の欠損金がまず減額され、その後繰越欠損金が減額されます。条件を満たし除外された債務免除益が、上述の減算項目総額を上回った場合は、上回った金額は永遠に課税の対象にはなりません。
株主が子会社への債務を免除し、出資金に返還した場合も、米国歳入法108条が適用されます。この場合は、子会社は株主からの借り入れを当該借入金の税務上簿価で返済したとみなされます。従って、借入金の税務上の税務簿価が額面価格と同額の場合は、このような債務から出資への変換に課税関係は発生しません。もし、株主が貸し倒れ損失等で損金算入などし、税務上の簿価が額面より低い場合は、債務免除益が子会社の課税所得として認められる可能性があるので注意が必要です。
また、子会社債務を出資金に変換する際に、子会社が株主に株式を発行した場合は、子会社は発行した株式の時価で債務を返済したとみなされます。従って、子会社株式の時価が債務額を下回った場合は、債務免除益が課税所得とみなされる可能性があります。ただし、もし、株式が発行されてしまっても、それが100%保有の子会社からであった場合に、米国連邦税務当局は株式発行を無視し、上述のように、子会社は債務の簿価で債務を返済したとみなした例もあります。
シニアタックスアドバイザー 佐藤仁美