税金相談室
2003年4月5日 23:00:00
住宅売却益の非課税措置(2003)
Q:住居の売却益が非課税扱いとなる範囲について教えてください。 A:売却前5年間のうち2年間について、納税者が住宅の所有権を有し(所有条件)、その住宅を日常の住まいとして使っていた(居住条件)という2条件を満たすと、住居を売却して得たキャピタル・ゲイン(売値から譲渡費用、取得費、改築費を差し引いた後の譲渡所得)は、独身25万ドル、夫婦合算申告50万ドルまでの所得除外によって、連邦所得税が非課税となります。 夫婦合算申告は、片方の配偶者名義であっても50万ドルまでが非課税となります。夫婦個別申告の場合、住宅の名義が夫婦共同であれば配偶者一人につき25万ドル、合計50万ドルが非課税、片方名義であればその配偶者分だけの25万ドルまでが非課税となります。 この非課税措置は、住居売却から2年が経過した後で、「所有条件」と「居住条件」の2条件さえ満たしていれば、一生に何回でも利用できます。日本へ帰国してアメリカの非居住者となってからアメリカの持ち家を売却する場合、非居住者の身分で滞在してアメリカの住宅を売却する場合、日本から転勤してアメリカ居住者となってから日本の住居を売却する場合、またはグリーンカード保持者がアメリカ国外在住中に住居を売却する場合にも、所得除外による非課税措置が適用できます。 ●複数の住居 複数(2軒以上)の住宅を有する納税者がそのうちの1軒を売却した場合、過去5年について1年ごとに、どの住宅が「主たる住居」であったかを決定し、非課税措置の適用を判定します。納税者が年内の大部分を実際に日常の居所としていた住宅を「主たる住居」とします。IRSが参考にする要素として、さらに納税者の勤務先、車の登録地および選挙登録地、取引銀行の所在地、家族構成員の日常的居所などがあります。 ●空き地 主たる住居の一部として納税者が所有し使用する空き地も所得除外の対象となります。空き地が住宅に隣接しており、住宅の売却は空き地の売却前後2年以内でなければなりません。空き地と住宅の適格売却は一回の譲渡として取り扱われ、25万ドル(夫婦合算申告は50万ドル)の所得除外は、空き地と住宅の合計譲渡額に適用されます。空き地と住宅の売却年度が異なる場合は、所得除外の順序は最初に住宅に、次に空き地にあてられます。 ●自宅事務所・自宅賃貸 自宅事務所または賃貸使用分が居所と同一棟にある物件を売却して譲渡益が発生した場合、譲渡益を住居と事業用に振り分ける必要はありません。自宅の一部を事務所または賃貸目的に使用していた場合でも、所得除外対象の「主たる住居」と同一視されるわけです。私用居所部分が2年間の「居住条件」および「所有条件」の2条件を満たしている限り、課税対象となる建物部分の1997年5月7日以降の減価償却累積額を除いて、私用分と事業分の合計譲渡益に所得除外が適用となります。 事務所または賃貸使用分が車庫、納屋、うまや、農地などのように居所から離れていて、事業使用が売却前5年間のうち3年間以上である場合は、その部分に配賦された売却益は所得除外が適用されず、課税対象となります。居所に配賦された売却益は、2年間の「居住条件」および「所有条件」の2条件を満たしている限り、所得除外による非課税措置が適用となります。ただし、居所が2年間の両条件を満たしていたとしても、1997年5月7日以降、減価償却を控除していた場合は、譲渡益のうち減価償却該当分については課税対象、差額分は非課税対象となります。減価償却に該当する譲渡益は、フォーム1040のスケジュールDに報告し、25%の特別税率で課税されます。 ●独身者の共同名義 住宅を二人以上の独身者が共有名義で所有していた場合、譲渡益に住宅所有率を掛け合わせた金額を各自の譲渡益として、各人が25万ドルまで所得除外による非課税措置を受けることができます。 ●転勤・病気などのための早期売却 転勤、病気、その他の予期できない事情により2年間の所有条件、居住条件または売却間隔条件を満たさずに住居を売却すると、売却益の按分比例による減額分が非課税扱いの対象となります。納税者自身に加えて、配偶者、共同名義による住宅の所有者、納税者の住宅を日常の住まいとしている同居人も適格者に含まれ、これら適格者の転勤、病気、その他予期できない事情による早期売却は減額分が非課税扱いの対象となります。 健康上の例外については、病気の子供、親、祖父母、兄弟姉妹などを含む適格者の家族にまで定義拡大がなされています。医師の勧告による健康上の理由による住居の移動のための売却は、自動的に適格譲渡となります。単に全般的な健康改善のための移動は、健康上の例外とは見なされません。 勤務先変更の例外のための安全圏は、適格者の旧住居と新勤務地の間の距離が、旧住居と旧勤務地の間の距離よりも50マイル以上長いことです。この条件を満たしていれば、自動的に住居の早期売却が減額された所得除外の対象となります。また、たとえこの安全圏を満たしていなくても、早期売却の理由が転勤のためであれば、勤務先変更の例外として認められます。 予期できない事情の例外のための安全圏として、以下の例が挙げられています。①政府による住居からの強制退去、②自然災害、人工的災害、戦争、テロ行為による住居の破壊、③死亡、離婚、法定別居、失業保険受給、住宅費および基本生活費の支出維持に支障をきたす雇用事情の変更、一度の妊娠による多重産。住宅の早期売却の理由がこれら安全圏であれば、減額された所得除外の対象となります。 米国公認会計士 大島斉藤会計事務所 大島襄