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会計相談室

2011年2月25日 14:00:00

中小企業に対する国際会計基準について

Inage Hawaii

Q. 中小企業用の会計基準があると聞きましたが、どのようなものでしょか?


A. 現在のアメリカの会計基準には、中小企業用の会計基準というものは存在していません。国際会計基準では、中小企業用の国際会計基準(IFRS for SMEs)が用意されています。しかしながら、この中小企業用の国際会計基準の採用状況については、国際会計基準の採用国が一律に適用しているわけではありません。なぜならば、①一般的に上場するときにのみ国際会計基準は採用すれば事足りること、②国際会計基準とその国の会計基準が似ている場合に、特に採用の必要がないこと、③国際会計基準は世界的に使用される高品質の基準であり、中小企業のためのものではないと考えられること―などが理由として考えられます。


国際会計基準は100カ国を超える国で採用されていますが、これはあくまで上場企業についてです。非上場企業については、各国で事情が異なります。ある調査では、65カ国の国際会計基準の採択国のうち、37カ国が国際会計基準をその国の制度会計(その国の法律で認めた会計基準)として、またはそれとみなして受け入れましたが、フランスとドイツを含むその他の28カ国は、国の制度会計としては適用を禁止しています。28カ国は特に税務上の報告のために制度会計を使用しますが、その会計は国際会計基準とはかなり異なっています。


一方、アルゼンチンや中国の制度会計は国際会計基準に近いものとなっていくようです。カナダは中小企業用に異なる会計基準を2009年に公表しましたが、国際会計基準の採用も認めています。イギリスでは、非上場会社では国際会計基準とイギリス基準またはIFRS for SMEsの3つの採用を認めています。ブラジル、ノルウェーとスペインは独自の中小企業用の会計基準をもっています。キプロスとエルサルバドルはIFRS for SMEsを採用しました。日本はIFRS for SMEsの採用についてはコメントしていません。中小企業用の独自の会計基準を開発しているようです。国際会計基準審議会の10年4月の発表では、60カ国がIFRS for SMEsを採用したか採用を検討しているとのことです。


アメリカ国内では、中小企業にとって、現在の米国の会計基準は①数が多すぎる、②内容が細か過ぎる、③選択の余地が少ない、④上場会社と非上場会社、年度決算と中間決算および大会社と小会社の違いが十分ではない、⑤測定について非常に複雑な面がある―などの問題点が指摘されています。


このような問題点に対しての対処策として、昨年の10月までに検討されていた内容では、非公開会社専門の会計基準委員会を創設し、中小企業用のための全く独自の会計基準を創ろうという案が最も有力です。


齊藤幸喜

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