会計相談室
2010年9月16日 16:00:00
レビューとコンピレーション
レビューとコンピレーション
弊社では、財務諸表についてコンピレーションとレビューを会計士から受けています。今期よりこれらの基準が大幅に改正されたと聞きましたが、どのような内容ですか?
A 会計およびレビュー基準(Statements on Standards for Accounting and Review Services;SSARS) 19号「コンピレーション業務およびレビュー業務」が、AICPA(米国公認会計士協会)より2009年12月に発行されました。当該基準はARSC(Accounting and Review Services Committee)によってまとめまれました。
ARSCとは、AICPAの上級理論委員会で非上場会社の監査以外の証明サービスについての基準をまとめることを目的としています。ARSCの7人のメンバーは全て地方会計事務所から構成されています。この新しい基準は、10年12月15日以降の決算期末の会社から適用になります。コンピレーションの際、独立性がない場合には、早期適用も認められています。内容については、1978年以来の大改正となったと言われています。
今回は、コンピレーションの会計士のレポートについての新オプションについて話したいと思います。かつてのコンピレーションの規定では、会計士に独立性がない場合、独立性がないことの開示は必要でありましたが、その理由の開示はしないことになっていました。それは、会計士が独立でないことの理由は、財務諸表自体と関係がないことであることと、理由の開示はかえって財務諸表の利用者に混乱を招くと考えられていたからです。
多くの小規模企業は会計士の証明業務以外に以下のような業務を会計士に委託しています。①給与計算とその転記②総勘定元帳の作成管理③修正仕訳の作成と記帳④銀行勘定調整表の作成⑤固定資産台帳の作成管理⑥繰延税金資産の計算⑦財務諸表の作成 もしも会計士が、上記の業務を行う過程で顧客企業の内部統制の確立や管理維持に関わる業務を行った場合、独立性は失われてしまいます。
2005年から06年にかけて、ARSCはコンピレーション業務の独立性に関して、特定の質問事項について実態調査を行いました。特定の質問事項とは、現在の独立性の規定が維持される場合、コンピレーション基準1号の独立性の基準が修正され、会計士は独立性がない理由を開示するべきかというものです。その結果は、2477(57.9%)が賛成、1391(32.5%)が反対、412(9.6%)がどちらともいえないでした。さらに詳細を分析すると独立性のない場合の理由の開示については、専門家でないほど肯定的な意見の人が大多数でした。その結果、新基準では、会計士はコンピレーションに関する独立性がない場合、その理由を開示する義務はありませんが、開示してもよいというオプションが設定されました。
もしも、理由を開示する場合、全ての理由を開示しなければなりません。1部を隠すことはできません。また、会計士は理由を最初の年度だけに付けて、その後は付けないことができます。この場合、専門家としての判断が要求されます。このオプションにより会計士の報告書がより透明性の高い利用価値の高いものになると考えられています。
2010年9月16日