税金相談室
2001年2月5日 23:00:00
ビザと税金

Q:ビザと税金の関係について教えてください。
A:アメリカの税法上、外国人は居住者または非居住者に区分されます。どちらに該当するかによって課税対象となる所得額や、認められる控除の種類や適用される税率が異なります。
このため、アメリカにおける外国人の所得税に関する取り扱いを検討するにあたって、本人が居住者であるか非居住者であるかを判定することが最も重要なポイントになります。
● ビザの種類で居住者・非居住者が決定するケース
一部の外国人は多くの場合、ビザの種類によって居住者・非居住者が決定されます。グリーンカード(永住権)保持者は自動的に居住者となります。Aビザ(外交官)、Gビザ(国際機関)、Fビザ(学生)、Jビザ(交換留学生・研究者)、Mビザ(専門学校生)、Qビザ(司法省認可交換研究者)の場合は、税法上非居住者となります。
● ビザによらず滞在日数で居住者・非居住者が決定するケース
上記以外のビザ、例えばBビザ(一時訪問者)、Eビザ(条約商人・投資家)、Hビザ(就労者)、Iビザ(報道機関)、Kビザ(婚約者)、Lビザ(派遣管理職)、Oビザ(特殊技能者)、Pビザ(芸能人・スポーツ選手)、Rビザ(宗教関係者)の外国人はビザによって居住者・非居住者は決定されず、アメリカに滞在した日数に関して、次の2つの条件(実質的滞在条件)を同時に満たすと居住者として扱われます。
(1)当該年度中の滞在日数が累計で31日以上であること。
(2)当該年度中の滞在日数、前年度中の滞在日数の3分の1、および前々年度中の滞在日数の6分の1の合計が183日以上であること。
● 外交官・国際機関職員の場合
Aビザ、Gビザ保持者は「実質的滞在条件」の日数計算上、除外される個人と規定されているため、たとえ何年間アメリカ国内に住んでいても非居住者となります。そして、外国政府交公館、国際機関から受け取る給与・手当については、アメリカの税金は課されません。
しかし、これらのビザ保持者の職務以外の所得、例えば本人または家族による外部アルバイト収入、投資所得などについては、通常の非居住者外国人に適用される税法規定に基づいて課税関係が決定します。外部アルバイト収入は通常の所得税(15%~39・6%)の対象となるためフォーム1040NRによる確定申告が必要です。
また、銀行預金利子、キャピタル・ゲインは非課税、配当は日米租税条約第12条により15%の源泉徴収税が課されます。
● 留学生の場合
Fビザ、Jビザ、Mビザ、Qビザを保持して、フルタイムで通学している留学生は、「実質的滞在条件」の日数計算上、除外個人と規定されているため、アメリカ滞在日数が183日を超えても非居住者となります。通常は入国してから5年間は非居住者として扱われ、6年目以降は「実質的滞在条件の計算が適用されます。ただし5年経過後でも、将来永住権を取得する意志がなく、移民法の規定に準拠していることを示すことにより、引き続き「実質的滞在条件」の除外個人となります。
Jビザ、Qビザの保持者で、学生としてではなく、教職または研修生の身分を有する外国人は、アメリカ入国後2年間だけ「実質的滞在条件」からの除外個人となります。
アメリカでアルバイトなどの役務提供をして給与を受けた場合は、非居住者であっても、当然税金の対象となります。フォーム1040NRの確定申告書で税金を計算して申告することになります。
アメリカでの収入がなくても、奨学金の給付を受けていたり、日本企業から滞在費・学費などをカバーするために給付を受けている企業留学生の場合は、たとえ課税対象の所得がなくても、フォーム8848(Statement of Exempt Individual)およびフォーム1040NRによるIRSへの報告義務があります。
慈善スポーツ競技に参加するPビザのスポーツ選手、ビザにかかわりなく病気のためアメリカからの出国予定が延びている外国人も「実質的滞在条件」からの除外個人とされています。
KPMG特別顧問、米国公認会計士 大島襄