税金相談室
2002年7月5日 22:00:00
パートナーシップ所得の課税
Q:パートナーとして資本金を支払い、パートナーシップによる事業経営に参加することになりました。パートナーシップの税金のしくみを教えてください。 A:パートナーシップは株式会社と並び、アメリカにおける事業経営の一般的な形態の一つです。株式会社の株主に相当するのが、パートナーシップのパートナーです。両者の違いは税金上の取り扱いです。株式会社は法人(所得)税の対象となるため、毎年会社の純利益に法人(所得)税が課されます。株主は、配当を受け取った時にだけ課税されます。 パートナーシップの純利益はパートナーシップに対して課税されません。利益分配の有無にかかわりなく、各パートナーの持分利益に対してパートナーが課税を受けます。パートナーが個人であれば個人所得税を、法人であれば法人(所得)税を納めます。 パートナーシップは決算期終了後、毎年パートナーシップ申告書フォーム1065に損益計算書、貸借対照表、各パートナーの持分損益などを記載してIRS(内国歳入庁)に提出します。その際税金は計算されません。各パートナーには持分損益などが記載されたスケジュールK―1が発行されます。スケジュールK―1にある事業損益、受取利子、受取配当、不動産損益、キャピタル・ゲイン、税額控除などの金額を個人パートナーは、それぞれ個人所得税申告書フォーム1040および添付スケジュールの所定の個所へ転記して申告します。 事業損益はスケジュールEのパートナーシップ所得の欄に転記し、ほかの所得と合算されて総所得となります。パートナーシップ純損失は、ほかの所得と損益通算されるため節税効果があります。純利益は通常の所得税のほかに、セルフエンプロイメント・タックス(15・3%のソーシャル・セキュリティー・タックスおよびメディケア・タックス)の対象となります。 受取利子および受取配当はスケジュールBに転記し、総所得の一部となります。 不動産所得は消費活動ルールの対象となります。スケジュールEに転記し、純利益は総所得になりますが、純損失はほかの所得との損益通算できる場合とできない場合とがあります。損益通算が認められるレンタル・ロスは最高2万5000ドルを限度額としています。調整総所得が10万ドルを超えない場合は2万5000ドルの限度全額が認められますが、調整総所得が10万ドルを超えると、この限度額は段階的に減額し、調整総取得が15万ドルに達すると相殺控除額はゼロとなります。損益通算が認められなかったレンタル・ロスは、ほかの年度への繰り延べが認められます。 キャピタル・ゲイン、キャピタル・ロスはスケジュールDに転記し、ゲインとロスは相殺されます。長期キャピタル・ゲインは最高20%の優遇税率の対象となり、短期キャピタル・ゲインは最高38・6%の通常税率の対象となります。キャピタル・ゲインと相殺後に残ったキャピタル・ロスは3000ドル(夫婦個別申告は1500ドル)まで通常所得との損益通算が可能です。未使用のキャピタル・ロスはほかの年度に繰り延べられます。 慈善寄付控除、投資支払利子控除、退職基金積立控除、各種税額控除なども、パートナーシップ・スケジュールK―1から個人所得税申告書の所定の個所へ転記します。 パートナーシップ所得および控除の各パートナーへの配賦は、特にほかの方法による指定がない限り資本金の投資比率が適用されます。 自由業の事業所得と同様に、パートナーシップ所得がある場合は、年4回にわたる予定納税の払い込みを必要とすることに注意しなければなりません。 なお、スケジュールK―1は、リミテッド・ライアビリティー・カンパニー(LLC、有限責任会社)、S法人(株主課税法人)の場合も発行され、パートナーシップ の場合と同様、各株主の段階で課税されます。 米国公認会計士 大島 襄会計士事務所所長 大島襄