会計相談室
2021年10月29日 14:00:00
パンデミックのゴーイングコンサーンって何じゃ
「譲謙(ゆずけん)さん、わしの友人の会社が監査を受けているんじゃが、パンデミックなので、ゴーイングコンサーンがどうしたこうしたと聞いているんじゃ。何かわかるか?」会社経営者の鬣(たてがみ)が会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称、譲謙)におもむろに聞いた。「はい、会社の決算書の話です。現在の会社の決算書はゴーイングコンサーンを前提に作成されています。」「だから、そのゴーイングコンサーンってのは何じゃ?」「ゴーイングコンサーンとは、会社が永久に続くと仮定して作成した決算書です。1回きりで終わる企業はその会社を清算して有り金を計算し、株主に配当しますが、会社が永久に続くと仮定すると一定期間で区切って決算をしていかないと損益も配当も計算できなくなります。」「ほう、そうか。何となくわかるな。そうするとゴーイングコンサーンではない会社は、潰れる会社ということか?」「短くいうとそういうことになります。」「それで、なんでパンデミックで、いきなりゴーイングコンサーンが問題になってくるんじゃ?」「いきなり問題になったわけではありません。もともと経営者は、自分の会社がゴーイングコンサーンで財務諸表(FS)を作成することが適切かどうかを判断する義務があります。また、会社が決算報告をした後も合理的な期間(通常12か月)ゴーイングコンサーンが維持できるかどうかを注意深く予測しなければなりません。その上で、FSがゴーイングコンサーンで作成することが適切かどうか結論付けるのです。経営者は何らかの出来事や状態によってゴーイングコンサーンを続けることが非常に難しいと判断した場合には、その内容を開示し、清算ベースで決算書を作成しなければなりません」「そうか、パンデミックがその何らかの出来事や状態に当たるわけだな。」「その通りです。ゴーイングコンサーンの問題が起きると決算期後合理的な期間の経営が続けられるかどうかは一般的に資金繰りができるかが重要になります。監査人はその経営者の下した決定が適切かどうか、また、十分な開示がされているかどうかを監査しなければなりません。」「パンデミック自体が一般的なゴーイングコンサーンの問題を提起するとなるとパンデミックが関係ない会社でも開示が必要になるということか。」「その通りです。FSの読者はこの会社は、はたしてパンデミックが起きているのにゴーイングコンサーンの問題はないのか、と思うわけです。特にホスピタリティ産業のレストラン、バー、航空会社、クルーズ会社などはそうです。ゴーイングコンサーンの予測に不確実性がある場合には、その内容をFSの不確実性とリスクの項目に開示する必要があります。なお、ゴーイングコンサーンに実際に問題が生じている会社では、非常に重要な内容なので監査レポートにも情報が記載されます。」「そうか、かなり重要なんじゃな。ありがとう」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saikos.com):齊藤幸喜