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税金相談室

2007年5月15日 22:00:00

ソーシャル・セキュリティー手当と源泉徴収税

Inage Hawaii

質問:日本在住の日本人で、アメリカからソーシャル・セキュリティー手当を受け取っています。アメリカで30%の源泉徴収税を差し引かれていますが、税金なしで受け取ることができると聞きました。今後、源泉徴収税を回避するにはどうしたらよいのでしょうか。


答え:ソーシャル・セキュリティー手当は、日米租税条約を適用してアメリカの源泉徴収税を差し引かれることなく受け取ることができます。源泉徴収税が課された場合の還付請求の方法、租税条約適用の申請方法について検討します。


①源泉徴収税

アメリカの税法上、非居住外国人とされる者が、利子、配当、ロイヤルティー(権利使用料)、レント、年金など、アメリカの商活動と実質的に関連のない所得を米国から受け取る際、国内法で特別に免税措置が規定されていない限り、通常30%の米国源泉徴収税の対象となります。


国内法で免税措置が規定されている例として、銀行預金利子、地方債利子、財務省証券利子、キャピタル・ゲインなどがあります。また、アメリカから所得を受け取る外国人が租税条約締結国の居住者である場合は、

租税条約による低減税率が適用されます。日米租税条約上、配当、利子、ロイヤルティー、年金、離婚手当に対する低減税率が定められています。


アメリカで働いて給料支給を受け、ソーシャル・セキュリティー・タックスを10年以上払うと、62歳以降にソーシャル・セキュリティー手当の受給資格が得られます。日米社会保障協定の発効後はアメリカでの納税が10年に満たなくてもソーシャル・セキュリティー手当の受給資格が得られます。受給資格があれば、日本帰国後もソーシャル・セキュリティー手当てを受け取るこができます。


日米租税条約第23条に含まれる年金とは、企業年金、保険年金および社会保障年金など、すべての退職年金を指します。したがって、日本在住の日本人がアメリカから受け取るソーシャル・セキュリティー手当については、源泉地国アメリカでの課税は免除され、居住地国日本のみでの課税となります。租税条約の適用を受けるための然るべき手続をしておけば、30%の米国源泉徴収税を引かれずにソーシャル・セキュリティー手当を受け取ることができます。逆に米国居住者が日本から厚生年金、国民年金、企業年金などを受け取る場合も同様、日米租税条約の適用により日本の源泉徴収税を課されずに受け取ることができます。


②還付請求

租税条約によって、15%、10%などの低減税率あるいは無税が適用されるべきであるにもかかわらす、30%の源泉徴収税が差し引かれた場合、還付請求書をIRSへ提出して超過納税額の還付を受け取ることができます。還付請求のための必要書類は、源泉徴収額が記載されたフォーム1042S、および、非居住外国人用の個人所得税申告書フォーム1040NRです。


フォーム1040NRに還付の根拠と必要事項を記入して、源泉徴収額を示すフォーム1042Sを添付してIRSへ提出します。還付請求書の提出期限は時効が成立する以前であり、オリジナル申告書提出期限後3年です。4年前およびそれ以前の年度の還付請求は認められないので要注意です。


③租税条約の適用申請

租税条約の低減税率の適用を受ける非居住外国人は、源泉徴収代理人(Withholding Agent)に対してフォームW-8BENにその旨の意思表示を記入して提出すると、正しい税率による源泉徴収税が差し引かれます。アメリカのソーシャル・セキュリティー手当てを受け取る日本在住の日本人は、ソーシャル・セキュリティーアドミニストレーションにフォームW-8BENを提出することにより、源泉徴収税を差し引かれずに手当ての全額が支給されるようになります。記入事項は、氏名、受益者の種類(個人)、住所、ソーシャル・セキュリティー番号、日米租税条約の適用条項(第23条)、税率(0%)、根拠(租税条約締結国の国民であり、年金は居住地国のみで課税対象となるため)、署名および日付です。


【フォームW-8BENについて】

 フォームW-8BENは、通常アメリカから支払われる所得の受取人の身分が非居住外国人(あるいは外国組織)であることを証明するために使われます。非居住外国人が米国銀行口座を開設する場合、または外国から米国株式、米国債券、ミューチュアル・ファンドなどに直接投資する場合などに必ず必要とします。また、グリーンカード以外のビザでアメリカに住んでいた日本人が、日本に帰国する際にアメリカの銀行預金口座を残しておく場合などにも、居住者から非居住者への身分変更を表明するために不可欠な届出用紙です。

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