会計相談室
2009年11月17日 14:00:00
コンピレーションやレビューの新基準
Q. 米国のコンピレーション (compilation)やレビュー(review)の基準が変わると聞きました。どのような内容でしょうか?
A. コンピレーションとは会計士が財務諸表を作成するお手伝いを行うサービスです。レビューとは財務諸表につき会計士が、大きな間違いがないかどうかの意見を表明するサービスです。コンピレーションはテスト業務(attest engagement)の1つですが、証明業務(assurance engagement)ではありません。レヴューは証明業務です。アメリカでは、監査を実施しない会社では、コンピレーションやレヴューが会計士によって財務諸表サービスとして提供されています。
現在、提言中の新しい米国会計およびレビュー基準は(新SSARS)2010年12月15日以降から始まるレビューおよびコンピレーションに対して適用になります。新基準(新SSARS)では独立性よりも信頼性に重きをおいています。今までは、会社との独立性がなければ証明業務であるレビューは行えませんでしたが、内部統制サービスを提供している場合に限って、独立性がなくてもレビューが行えるようになります。内部統制サービスには、記帳代行、会計上の差額調査、内部統制のデザインや補助業務が含まれます。中小企業では、顧問会計士が最もその会社をよく知っているので、内部統制のサービスも当該顧問会計士から受けた方がより効率的であると考えられています。しかしながら、内部統制サービスの多くは会計士の独立性を失わせてしまうので、今までは、同じ会計士がレビューを行うことができませんでした。しかしながら、顧問の会計士がレビューを行えないとすると中小企業の負担を著しく大きくしてしまう可能性があるため、今回の新基準で改正がなされることになりました。新基準では、レビュー証拠(review evidence)やレビューリスク( review risk)という新しい概念の言葉が使用されています。また、重要性(materiality)という概念も再検討されていますが、それ自体はレビューでは新しい言葉ではありません。
新基準での大きな改正点は、①契約書(Engagement letter)が顧客と文書で交わされていなければならないこと②手続きの文書化の強化③内部統制サービスを提供している場合にその記述④独立性の欠如に関する一般的な説明です。
新基準での会計士のリポートでの大きな改正点は、以下の通りです。
①独立性の欠如に関する記述。今までは独立でない旨のみの記述だったのが、なぜ独立でないのか一般的な説明も記載することになります。なお、財務諸表の利用者に誤解を与えないために詳細な理由は書きません。
②強調事項(Emphasis matter)は、現在のものと変更はありません。財務諸表に記載がされている限り、会計士はレポートで強調する可能性があります。
③“GAAPに従っていない“という言葉は”適切な財務報告フレームワークに準拠していない“に変更されます。
④企業継続性については、会計士は経営者に必要な開示を求めなければなりません。会計士は可能ならば、開示の妥当性を考慮する必要があります。もしも、妥当でなければ、財務報告フレームワークに準拠していない旨をリポートに書く必要があります。
⑤レビューリポートのスコープ部分の文章が変更になります。 その他、上級経営者が不正に関わっていた場合、適切な上位機関に報告する必要があります。ビジネスオーナーが不正を行っていた場合には、契約を打ち切ることを検討する必要があります。
レビューの場合、次のケースでは新基準の適用対象にならず、監査基準セクション722の適用になります。①直近の財務諸表で監査が行われていた場合②期末監査の一部としてレビューを行った場合③年次財務諸表と同じ条件で期中の財務諸表が作成されていた場合