会計相談室
2021年4月23日 13:00:00
コロナと不正経理
「コロナでわしの友人も何人か会社を閉めたのじゃが、会社倒産を偽って不正をするやからもいると聞いたが、本当か?」会社経営者の鬣(たてがみ)がおもむろに会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称、譲謙(ゆずけん)に聞いた。
「そうですね、会社倒産での不正は、倒産のプロセスで行われます。一般的な方法は、故意に虚偽の報告をしたり、不正確な表現することで行われます」「しかし、倒産のプロセスは厳格に行われるんじゃないのか?」「はい、その通りです」「それじゃ、不正などできないだろう」「通常はその通りなのですが、現在は通常の状態ではありません。COVID-19パンデミックです。不正の3要素が完璧にそろっている状況だと言われています」「不正の3要素は聞いたことがあるけど何だったけ?」「不正を簡単に行える機会があること、不正を犯す動機があること、それに不正を正当化できる都合の良い言い訳があることです。これらの3要素が揃うと不正は起きやすくなります」「そうか。確かにこれだけ倒産が増えてくれば機会は増すな。失業してお金がなくなれば動機が生じやすい。さらに従業員や家族を食わせるためにやむなくやったという正当化もできるな。ところで、不正はどんな手段で行うのじゃ」「まず、資産隠しや資産の過小評価です。資産リストから資産を除いたり、価値を故意に下げたりします。また、帳簿をぐちゃぐちゃにしてしまうことです。例えば、個人の場合、フリーランスの収入をごまかしたりします。また、決算書と税務申告書が首尾一貫していない場合には、資産を過小評価したり、負債を過大計上している可能性が高いと考えられます」「そりゃ、ひどいな」「次に現金や高価な資産を親しい家族や友人に移転してしまう方法もあります。会社の倒産では、新しい会社を設立し、資産や、顧客、工程や機械を不正に移してしまうこともあります」「そんなことまでするのか。従業員は辞めたりしないのか?」「重要な従業員が辞めていくことがありますが、経理課の社員が辞めてしまうと帳簿がぐちゃぐちゃになってしまいます。経営判断に重要な影響を与える財務部長や取締役までが責任をとりたくないので辞めていくこともあります」「それも困ったもんだなぁ」「さらに自分で勝手に支払先の優先順位を決めて借金を返済してしまうこともあります。例えば、自分の家族やともだちに優先して借金を返済することです」「本当にひどい話だ。お客様で倒産があった時には気をつけんといかんな」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜