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税金相談室

2002年10月20日 22:00:00

アメリカにある財産の贈与

Inage Hawaii

Q:アメリカに住むグリーンカード保持者です。日本在住の両親名義のアメリカにある住宅と株式を生前贈与の形で受け取った場合の税金について教えてください。


A:親の所有財産を子に贈与すると、贈与した者(贈与者)または贈与を受けた者(受贈者)の居住地と財産の所在地に応じて、日本とアメリカの両国、またはいずれか一方の国の贈与税が課されます。贈与税の納税義務者は、日本では受贈者(子)であるのに対して、アメリカでは贈与者(親)であり、日米で逆になっています。


日本でかかる贈与税


このケースでは、日本とアメリカの両国で贈与税が発生します。以前は、日本の居住者(親)が所有する日本国外(アメリカ)にある財産を、海外で日本の非居住者(子)に贈与・相続する場合、日本の贈与税・相続税は発生しませんでした。しかし、2000年4月1日以降、日本の税制改正により、一定条件を満たす国外財産の贈与・相続による移転については、日本の贈与税・相続税が課されることになりました。「一定条件を満たす国外財産の移転」とは、次の三条件を同時に満たす場合を指します。


(1) 受贈者(または相続人)が、日本国内に住所を有していないこと。


(2) 受贈者(または相続人)が、日本国籍を有していること。


(3) 受贈者(または相続人)および贈与者(被相続人)のいずれかが、財産移転開始前5年以内に、日本の居住者であること。


この改正により、従来のような海外資産の合法的な税金回避手段は使えなくなりました。以前は、日本の居住者(親)が所有していた日本国外(アメリカ)財産について、日本の非居住者(子)が、贈与・相続を受けた場合は、日本の贈与税・相続税の対象外でしたが、現在の税法上では贈与税・相続税を免れることはできません。


例えば以前は、日本の居住者(父)が外国の銀行に自分名義の口座を開設し、その海外預金口座に資金を振り込むことにより、日本国外財産を所有して、その資金をアメリカ居住者(子)に贈与すれば、日本の贈与税の対象外でした。


2000年4月1日以降の税制改正後は、日本の贈与税が課されます。従って、このケースのように日本の親が所有するアメリカにある住宅、株式などの財産をアメリカの居住者である子に贈与する場合、日本の贈与税(10%~70%の累進課税率)が発生します。


改正後の日本の税制上でも非課税なのは、親と子の両方が日本国籍所有者で、かつ過去5年以上にわたって日本国外に居住している場合、および受贈者・相続人が外国籍保持者である場合に限られます。


アメリカでかかる贈与税


次に、アメリカの贈与税についてですが、アメリカ税法上の非居住外国人(親)が贈与者としてかかわっており、アメリカ国内財産の贈与であるため、課税対象となります。ただし、「有形資産」「無形資産」の税法上の財産の種類によって、米国贈与税の課税・非課税が決まります。「有形資産」とは、不動産、現金、自動車、宝石貴金属、美術品などのことであり、「無形資産」とは、株式、債券、有価証券、手形、著作権などのことです。贈与者が非居住外国人である場合に限り、贈与財産が「有形資産」であれば課税対象となり、「無形資産」であれば非課税となります。


住宅は「有形資産」なので贈与税が課され、株式は「無形資産」なので贈与税は課されません。「有形資産」「無形資産」の区別は、アメリカ市民や居住者の贈与には適用されず、財産の種類に関係なくすべての贈与が課税対象となるため注意が必要です。連邦贈与税の税率は18%~50%(02年の最高税率)となっています。


ニューヨーク州、コネチカット州など6州で贈与が発生した場合は、州贈与税も課されます。同一の贈与に対して日本とアメリカの両国で贈与税が課された場合、外国税額控除の適用によりいずれか一方の国の二重課税の一部、または全額回避が達成できます。


米国公認会計士/大島襄会計士事務所所長 大島襄

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