会計相談室
2023年5月12日 13:00:00
連結決算で重要なこと。
「譲謙(ゆずけん)さんや、うちの会社では連結決算を行っているんじゃが、重要なポイントはなんじゃ?」会社経営者の鬣(たてがみ)は会計コンサルタントの譲矢健吉(ゆずりやけんきち:通称、譲謙ゆずけん)におもむろに聞いた。
「連結決算とは、親子会社を1つのグループ会計と考えて合算して財務諸表を作成することです。」「それじゃ、親会社に子会社の財務諸表を単純にたせばよいだけか?」「いえいえ、そんなに単純ではありません。連結決算では、まず①親会社とその子会社、孫会社の財務諸表を全部合算します。それから、②子会社間や親子会社間の取引を消去しなければなりません。鬣さんがおっしゃったのは、このうちの①の手続きの合算です。」
「なんで、合算だけじゃだめなんだ?」「合算しただけでは、内部取引が足されてしまうので、売上や仕入れが過大に計上されてしまうことになるからです。例えば、子会社Aから子会社Bに500万円売り上げたからと言って、それはグループ全体からみれば、外部売上は$0です。」「確かにそうじゃのう。」「②の子会社間や親子会社間取引の消去手続きを連結消去仕訳といいます。」「“れんけつしようとしたわけ“っていうのはなんじゃ?」「連結消去仕訳(れんけつしょうきょしわけ)です。連結消去仕訳には、投資資本消去、内部取引消去、未実現利益消去、営業権と無形固定資産、有形固定資産の償却仕訳の計上があります。」
「ずいぶんあるな。こんなにあると正確に処理するのは難しいだろう?」「その通りです。」「それじゃ、間違わないようにするにはどうすれば、いいんじゃ?」「まず、連結にはアメリカ方式と日本方式があります。アメリカ方式は親会社が単体でEquity method(持ち分法)を適用することによって、親会社単体の損益や資本勘定と連結の結果を一致させる方法です。この方式の長所は親会社の財務諸表で連結の結果がわかることと、連結決算に間違いがあればすぐに発見できることです。日本方式はフラット連結と呼ばれますが、親会社が単体で持ち分法を適用しないために連結消去で正しい数字を出さなくてはなりません。長所は、親会社で持ち分法を適用しなくてよいということです。資本を動かすことがないので、親会社単体の処理が簡単です。短所としては、連結消去仕訳で利益を動かす取引については、明細表で連結の始まった年から終了する年まで、すべての取引を記録しておく必要があります。資本消去取引では関係会社のすべての資本増減取引、未実現取引では未実現部分がなくなるまでトラッキングが必要です。営業権、無形固定資産、有形固定資産などでは、償却が始まってから完了するまでの増減表を完備しなければなりません。」
「ほう、それは面倒そうじゃな、それをしておかないとどうなるんじゃ?」「正確な連結財務諸表の作成できなくなります。」「それじゃ、簡単にする方法はないか?」「あります。なるべく複雑な内部取引はしないことです。内部取引はグループ全体の視点で見ると本当の売り上げではないのですから、なるべくシンプルにするべきです。そして、内部利益が次期に繰り越さないようにすればよいのです。シンプルな取引例としては売上と経費の相殺などは次期へ持ち越しません。」「そうか、よくわかった。ありがとう。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜