税金相談室
2007年12月15日 23:00:00
日本にある不動産の賃貸――2
質問: 米国在住の日本人です。日本の持ち家を人に貸しており、家賃は日本の銀行に毎月入金され、20%の源泉徴収税が差し引かれています。日本と米国での税金の正しい取り扱いについて教えてください。 答え: 米国居住者である日本人が、日本に所有する不動産を賃貸して家賃収入を受け取る場合、日米の両国で確定申告をする義務があります。9月3週号では日本での課税を説明しました。今回は米国での課税について解説します。 米国での課税 米国の税法上の身分が居住外国人とされる人は、米国市民の場合と同様、全世界所得を報告して税金を支払う義務があります。日本に残してきた家を人に貸して受け取る家賃収入は、日本でも米国でも課税対象になります。米国にある住宅からの賃貸収入と同様な方法で家賃純利益を算出し、その金額を給与、利子、配当などすべての所得と合算した合計額が、連邦および州の所得税の対象となります。不動産所得が赤字になった場合、その赤字を他の所得と損益通算できる場合とできない場合とがあります。他の所得が15万ドル以上ある高額所得者には、損益通算はみとめられません。 日本の不動産所得を米国の税務申告書上報告する家賃純利益の金額は、減価償却計算上や円ドル換算レート、支払利子控除の相違のため、日本側での不動産所得の金額とは同一となりません。 ■減価償却計算上の相違 「減価償却」とは資産の購入代金(取得価格)を、資産が使用できるであろう期間(耐用年数)にわたって配分し、経費(減価償却費)にしていく方法のことです。年数の経過によって経済的、物理的に価値が減少する資産である不動産(建物部分のみ)については、「減価償却」を必要とします。住居用不動産の「耐用年数」は、日本では鉄筋マンション47年、重量鉄骨系プレハブ34年、軽量鉄骨系プレハブ27年、在来木造・木質系プレハブ22年という具合に、鉄筋、木造、新築、中古など、建物の種類によってそれぞれ異なる年数を適用します。それに対して、米国では、鉄筋、木造、新築、中古の区別なく、海外住居用不動産の「耐用年数」は、一律40年を適用します。なお、米国内の住居用不動産は一律27.5年です。「耐用年数」の日米間の違いにより減価償却費も異なり、家賃純利益が同じ金額にはならず、差が生じます。 ■円ドル換算レートの相違 日本円から米ドルに換算する際、不動産については取得時の為替レートを使用して減価償却費を計算します。一方、賃貸収入や必要経費については、当該年度の為替レートを使用します。このため、日米間での相違が生じます。 ■支払利子控除の相違 日本では、家賃純利益を純損失にする土地部分の支払利子の控除は認められませんが、米国では建物部分および土地部分の不動産全体について支払利子の控除が認められます。この違いのため米国では家賃純利益の金額が圧縮されます。 以上の計算上の違いにより、同一物件の家賃純利益の計算が、日本と米国とでは異なるという結果が生じます。 既に一度日本で課税された所得を、再度米国でも報告することによって生じる二重課税は、それを回避するための連邦税法上の措置である「外国税額控除」の適用により解消されることになっています。 ■ 外国税額控除 賃貸活動が純利益となり、日米両国で税金を納めることになった場合は、日本側で支払った税金について外国税額控除の形で、連邦所得税から日本の税金を差し引くことにより、二重課税の一部または全部の回避が達成できます。賃貸活動が純損失の場合は、外国税額控除の適用はできません。その場合、未使用の外国税額控除を翌年に繰り越す方法と、外国税について税額控除ではなく「経費控除」方式を選択する方法とがあります。