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会計相談室

2009年4月14日 13:00:00

改正公正価値評価基準で適用の緩和とは

Inage Hawaii

Q:公正価値評価基準が2009年4月2日に改正され、適用方法がより緩和されたと聞きました。どのような内容でしょうか?


A:米国会計基準審議会(FASB)は、銀行業界や議会からの大きなプレッシャーの下、公正価値評価基準について、09年4月2日に改定し、同年4月9日に3つの新たなFASB職員の見解(FASB Staff Position; FSP FAS 157-4, FSP FAS 107-1 and APB 28-1 and FSP FAS 115-2 and FAS 124-2)を公表しました。


ちまたの報道では、公正価値基準の緩和といわれていますが、今回公表された基準では不明確だったレベル2とレベル3のそれぞれの公正価値の測定手法の適用基準をより明確にしたものといえます。それによって、今まで不明確なため、保守的に見積もられていた公正価値がより合理的に測定されるため、損失の拡大がある程度、緩やかになることが期待されるという意味で緩和という表現が用いられていると思います。


今まではレベル2の市場価格は多くの人が参加できる市場ではありますが、取引が活発でなくなった場合、最後の取引価格を用いることが要求されていました。しかしながら、市場が全く活発でなくなった場合や投売り市場では、最後の価格は適切な公正価値を反映していないということが明らかです。


これは、ある会社の株が市場で売買されていた場合、市場が全く機能しておらず1株につき1ドルの値段が市場でついたとします。しかしながら、その会社が万が一倒産し資産を処分しても純資産が1株あたり100ドルの価値があった場合、この1ドルは何を意味しているのか、理由付けが困難になる状況を言っています。


このような状況は、市場が全く機能していないケースの一例です。それでは市場が全く活発でない状況、あるいは投売りの状況とはどのような状況なのでしょうか?それを説明したのが、ESP FAS 107-1 and APB 28-1です。 この改定の結果、公正価値の測定方法やクレジットロス、クレジットリスクの予測についてのより詳しい開示が付け加えられました。FSP FAS 157-4ではSFAS第157号で規定している公正価値基準の目的を再確認しています。投売りや強制的な取引ではない通常の取引によって売却されるべき資産価格が公正価値として反映されるべきだとしています。特にかつて活発であった市場が活発でなくなった場合の公正価値の測定に関する判断の重要性について再認識しています。FSP FAS 157-4では次のケースを資産負債の全く活発でない市場の例としています。


①最近ではほとんど取引がない

②価格設定が直近のデータを基にしていない

③価格設定が時間外か市場仲介者のみによって決定されている

④以前は資産負債の公正価値と非常に相関関係があったインデックスが、現在は明らかにそうではないことが実証されている

⑤クレジットやその他の非数量的なリスクなどすべての市場情報を勘案した報告企業の予想キャッシュフローに対して観測している取引や取引価格に流動性リスクを加味したプレミアム、利率その他の指標の大幅な増大が暗に含まれている

⑥大きな売買スプレッド幅が存在するか大幅な売買スプレッド幅の増大が起きている

⑦資産負債のための新規発行市場で資金が全く集まらない状況⑧極少量の情報しか公開されていない状況 これらのケースではさらなる分析や調整、あるいは経営者の判断が必要で単なる最後の市場価格を公正価値とすることはできません。


重要な調整の方法としては、公正価値の測定手法のレベルを変更することや測定方法であるマーケットアプローチ、インカムアプローチやコストアプローチの複合的使用が考えられます。


FSP FAS 107-1 and APB 28-1では、貸借対照表(B/S)に公正価値が反映されていない金融資産負債について規定されています。今までは、そのような資産負債の開示は年に1度のみの開示でしたが、今後四半期ごとの開示が求められます。また、公正価値の予測について質的量的な開示が求められます。


FSP FAS 115-2 and FAS 124-2では一時的ではない価値の下落について、減損の時期と売却予定のない負債証券についてのクレジットロスとクレジットロス以外の減損について首尾一貫性をもたせています。期間利益のなかでの減損の測定を行いながら公正価値による開示を維持しています。さらにFSPは予想キャッシュフロー、クレジットロスや証券の未実現損益についての適時により多くの開示を求めています。


FSP FAS 115-2 and FAS 124-2では、以下のような場合、債券に一時的ではない価値の下落が生じている可能性があると考えています。


①市場価格が保有債券の簿価よりも低い状態で、売却を予定している場合

②市場価格が保有債券の簿価よりも低い状態で、売却の予定はないが、会社のキャッシュフローの状態が思わしくなく満期まで保有できる見込みがない場合

③市場価格が保有証券の簿価よりも低い状態で、売却する意思がなくても簿価の回収ができないことが予想される場合


この基準では、将来の回収予定のキャッシュフローの現在価値と簿価の差額をクレジットロスと定義しています。そして、一時的ではない価値の下落が認識された場合、その内容をクレジットロスとそれ以外のロスに分類します。クレジットロスは当期の損益として認識し、それ以外のロスはその他の包括利益として認識することになります。


以上のFSPは2009年6月15日後の期中と期末から有効です。しかしながら、同年3月15日後の早期適用も認められています。

 

齊藤幸喜

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