税金相談室
2007年12月25日 23:00:00
同種交換(Like-kind Exchange)による課税繰延(Sec. 1031 Exchange)
質問: 投資不動産を売るとキャピタル・ゲインが生じます。売却して得た資金は再投資するつもりです。税金対策でいい方法があったら教えてください。 答え: ●同種交換 譲渡不動産を移転した日から180日、または、その年度の申告書提期限(延長を含む)のいずれか早い方の日までに、交換不動産の所有権を取得しなければなりません。不動産の売却・譲渡によって生じる売却益は、通常、課税対象となります。不動産投資家が賃貸不動産などの資産を処分してかわりの類似資産を取得することにより、譲渡益を認識せずに最終的に物件を処分するまで課税繰延べを達成させる有効的な方法があります。それが、内国歳入法(IRC)第1031条に規定されている「同種交換」Like-kind Exchange です。日本の「等価交換」の制度に相当します。 同種交換を成立させるためには、納税者が譲渡する不動産と取得する不動産は、私用住宅以外の事業資産・投資資産である必要があります。次に、取引は不動産の売却・譲渡で得た資金を支払って新しい不動産を購入するのではなく、不動産の「交換」あるいは「相互移転」でなければなりません。そして、交換資産は同種資産であればいいことになっています。不動産と他の不動産との交換であれば、都市不動産と農牧用不動産との交換、整備不動産と未整備不動産との交換のように、用途などが異なるものでもかまいません。また、同種交換は機械や什器など、不動産以外の有体資産にも適用されます。 ●課税繰延の要件 課税繰延が認められるためには次の要件を満たさなければなりません。 ① 交換物件を特定する期間 不動産を譲渡した日から45日以内に交換物件を特定しなければなりません。3物件までは交換不動産の価値に制限なく特定できます。4物件以上の場合、取得する交換不動産の合計額は譲渡不動産の2倍までの価値とするという制限が設けられます。 ② 特定方法 交換不動産を明記した書面に納税者が署名をして、特定期間終了前に相手に手渡すか、あるいは郵送、ファックスで届けなければなりません。 ③ 交換の期間 45日の特定期間、および、180日の交換期間に加えて課税繰延を完成させる大切な条件として、交換不動産の取得日以前に現金の実質的受領を回避することがあります。資金は交換不動産の取得に支障なく充当するために確保されていなければなりません。納税者が交換不動産の取得以前に資金を自由にできる支配権を持っていると、取引全体が「売買」と見なされます。その結果、売却益が認識され、所得税課税が生じます。この問題を回避するために適格仲介者の制度があります。交換不動産と比べて譲渡不動産の価値の方が高い場合、移転後残った現金は課税対象となります。 ●適格仲介者 適格仲介者は、文書契約に基づき、納税者からの譲渡不動産の取得と購入者への移転を行い、交換物件の取得と納税者への移転を行います。然るべき手続きがなされれば、適格仲介者は譲渡不動産の譲渡代金を留保し、それを納税者に代わって交換物件の取得代金として充てることにより、課税収益の認識のない取引として完了させます。適格仲介者を通すことにより、譲渡不動産の購入者、および、交換物件の売却人の協力なしに交換を達成することが可能です。納税者は譲渡不動産の売買契約を自由に締結した後、その契約を適格仲介者に譲渡委任します。物件移転日までに、購入者に対して譲渡委任に関する文書通知がなされ、納税者から購入者へ所有権が直接移転し、同種交換の第一段階が完了します。 他方の取引にも同様な方法が適用されます。納税者は取得する交換不動産の売買契約を売却人との間にかわします。納税者はその契約を適格仲介者に譲渡委任します。物件移転日までに、売却人に対して譲渡委任に関する文書による通知がなされます。交換不動産の所有権は売却人から納税者へ直接移転し、同種交換の第二段階が完了します。納税者と適格仲介者との間の契約書は極めて重要な書類です。それには適格仲介者が保管している資金について、同種交換の必要条件である現金を受領したり、担保に供したり、借りたり、または何らかの恩典を受けたりする納税者の権利を制限することが明記されています。 以上が、内国歳入法(IRC)第1031条の「同種交換」Like-kind Exchangeを適用により、不動産と同種不動産を交換して譲渡益を認識せずに課税繰延を達成させる有効的な方法です。