会計相談室
2023年12月18日 14:00:00
ペンションプランの注記
「譲謙(ゆずけん)さん、財務諸表にPension Planの注記を書くようにと会計士から言われたんじゃが、何を書けばよいのじゃろ?」会社経営者の鬣(たてがみ)がおもむろに会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称、譲謙)に尋ねた。
「ペンションプランは確定拠出型ペンションプランと確定給付型ペンションプランに分かれますが、どちらですか?」
「ほう、どちらとも確定ナンチャラらしいが、いったい何がどう違うのじゃ?」
「確定拠出型ペンションプランとは、企業の費用負担は拠出する費用部分のみであって、従業員に給付される金額については、企業は一切追加的な負担を負わないというペンションプランです。」
「そうすると、誰が給付金額をきめるのじゃ?」
「通常は、受給を受ける従業員自身です。従業員は運用メニューの中から自分の好きな投資スタイルを選択して自分で資金を運用し、資産形成をしていきます。したがって、給付金額は自分自身でコントロールして決めることになります。」
「ほうそれは従業員に自由度があってよいな。ところで確定給付型とはどんな方法じゃ?」
「確定給付型とは、企業が従業員に給付金額や給付方法などをあらかじめ約束する方式のペンションプランです。」
「ほう、それも従業員は安心して働けるのでよいな。」
「はい、確かに聞こえはよいのですが、いわば将来の給付額を約束するものなので、企業にとっての負担は非常に大きくなります。未来をだれも確実に予測などできないからです。また、不確実な未来の約束をそう簡単に果たせるものではないので、企業にとっては非常にリスクが高くなります。」
「確か、うちの会社は、401(k)Planを採用していたが、これはどちらのプランじゃ?」
「それは典型的な確定拠出型プランです。」
「ほう、それはよかった。ところで、注記はどうなっとるんじゃろ?」
「注記の内容は、両者のプランで、全く異なります。」
「同じペンションプランと言うのになぜじゃ?」
「確定拠出型ペンションプラン、特に401(k) Planは、企業のリスクも従業員のリスクもほとんどないのに比べて、確定給付型ペンションプランは、将来を約束するために企業は非常に高いリスクを負うことになるからです。」
「そうか、それで、具体的にはどうなっているんじゃ?」
「確定拠出型ペンションプランで要求されている開示内容は、ペンションプランへの企業の拠出額、会計期間で変更になったプランの内容とその影響、例えば、企業の拠出割合の変更や企業結合や企業売却など、のみです。」
「それじゃ、確定給付型はどうじゃ?」
「確定給付型の開示は、給付義務債務、プラン資産の時価、ファンドステータス、企業の拠出額、従業員の拠出額、給付金の金額、累積給付債務、向こう5年間の給付金額の予想値、サービスコストや、その他諸々、非常に多くの開示が求められます。」
「そんなの見てもわかる人は少ないじゃろ。」
「そうかもしれませんね。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜