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会計相談室

2009年2月17日 14:00:00

コントロール外にある株主持分 (非支配持分)

Inage Hawaii

Q. 来年度より米国の会計基準では少数株主持分についての新会計基準が適用になると聞きましたが、どのようなものでしょうか?


A. 従来、少数株主持分(Minority Interest)といわれてきた親会社のコントロール下にない持分、いわゆる非支配持分(Noncontrolling Interest)についての新会計基準が2008年12月15日以降に開始する財務諸表から適用となります。


なお、この新基準の早期適用は認められておりません。米国会計基準審議会(FASB)と国際会計基準審議会(IASB)は非支配持分の会計処理についても密接な共同作業を行い、FASBは米国会計基準(SFAS)第160号、IASBは国際会計基準(IAS)第27号でそれぞれ会計基準を公表しています。


少数株主持分については過去に負債なのか、資本なのか、あるいはその中間に表示するべきなのか、その性質について長らく議論されてきました。その結果、FASBとIASBは非支配持分を資本とすることで決着が着きました。なお、SFAS第160号は非営利法人には適用になりません。


SFAS第160号の目的は、財務諸表の妥当性(Relevance),比較可能性(Comparability)、透明性(Transparency)を向上させることにあります。これらの目標を達成するために次のことが必要であると考えられました。


①親会社以外に所有されている子会社の持分は連結貸借対照表の資本の中で明確に区分表示されること


②連結損益計算書の純利益は親会社に属するものと非支配持分に属するものが明確に表示されること


③非支配持分が存在する子会社に対する親会社持分の資本増減の会計処理が首尾一貫していること。親会社が子会社の持分を増やしたり売却した場合や子会社が自社株を購入したり増資した取引は、ほぼ同じ取引なので、これらの取引については同じ会計処理が行われること


④もしも、子会社が連結対象から外れた場合、非支配持分は公正価値で評価されること。連結対象から、かつての子会社が外れる場合のゲインやロスは、非支配持分の公正価値によって測定されること


⑤企業は親会社と非支配持分について違いを十分に明確に開示すること。SFAS第160号の大きな改正点は、少数株主持分という言葉から非支配持分という言葉の変更です。


これは、親会社による単純な法形式上のパーセンテージ基準より実質的な実効支配基準を用いることにより、経済的な実態と会計上のコンセプトを表すことを可能にします。非支配持分は子会社の持分のうち、親会社に直接、間接属しない部分をいいます。


ときには少数株主持分ともいわれます。非支配持分は資本の部(Equity)に内訳として自己資本(支配持分)(Shareholders’ Equity)と非支配持分(Noncontrolling interest in subsidiaries)とに分けて表示することになります。親会社が子会社の持分を増やしたり売却した場合や、子会社が自社株を購入したり増資した場合、これらの取引はすべて資本取引として取り扱われます。


したがって、このような取引ではゲインやロスが損益計算書上に計上されることはありません。資本剰余金の調整として処理されます。また非支配持分の株の公正価値と調整後の非支配持分の差額(連結調整勘定等)の処理も自己株式の取得や売却と同様に資本取引の一部になります。


その他、従来と大幅に異なる取り扱いは、子会社に欠損金が発生した場合の非支配持分の取り扱い方法です。今までは、帳簿価額がゼロになるまでは少数株主持分に損失を負担させ、ゼロ以下になった場合には、親会社のみが子会社のロスを負担していました。


これは子会社が実際に破綻(はたん)した場合、親会社のみが投資額以上の負担を負う可能性が高いと考えられていたためです。新SFAS第160号では、ゼロ以下でも非支配持分に負担させます。この理由は、親会社が子会社の損失を負担する可能性が高いことに間違いないが、実際に親会社が子会社の損失を負担した場合には、持分も同時に増やすであろうという予測に基づいています。


非支配持分の購入資産や負債の評価方法はSFAS第141に規定されています。購入日に親会社が公正価値で資産負債を測定し計上することで、非支配持分も公正価値で計上されることになります。もしも、親会社が子会社のコントロールを失うことになった場合、これには親会社が子会社の持分を売却した場合や子会社の追加増資、親子会社間の契約や子会社が政府や法廷の支配下になった場合が考えられます。


このような場合には、親会社はゲインやロスを損益計算書上に計上することになります。この損益は子会社の純資産価額と受取った資産の公正価値の差額になります。SFAS第160号で要求されている開示項目は①連結財務諸表上では連結純利益、連結包括利益ですが、それぞれ親会社持分と非支配持分の金額②注記または連結損益計算書上では親会社の継続事業損益、非継続事業損益、異常損益③連結資本変動計算書または注記上では純資産の親会社持分と非支配持分、増資や減資、その他の包括利益の調整表です④もしも、非連結になった場合には、ゲインやロスの金額、かつての子会社の公正価値の再測定によって生じたロスやゲイン⑤損益計算書に明示されていないロスやゲインの開示が必要です。


齊藤幸喜

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