会計相談室
2019年11月15日 14:00:00
グリーンカード放棄
「譲矢謙吉(ゆずりやじょうきち)さん、わしの知り合いがアメリカのグリーンカードを放棄しようと考えているんじゃが、グリーンカードを放棄すると税金がかかると心配しておる。そのグリーンカード放棄の税金について教えてくれんか?」会社経営者の鬣(たてがみ)は会計コンサルタントの譲矢に聞いた。
「グリーンカードを8年以上保有し、グリーンカード放棄時点で次の3つの条件のいずれかに該当する場合には、保有する全ての資産をいったん売ったとみなして税額を計算して申告をしなければなりません。①純資産が$2M以上、②過去5年の納税額の平均が$168,000以上(2019年)、③過去5年間で申告を1度でもしていない場合です。その結果、税金がかかる可能性があります。なお、グリーンカードまたは市民権を放棄する場合には税金がかかろうとかからまいとForm8854によって申告が必要です。」
「そうか、簡単に放棄は考えないほうがいいな。だが、もしも、放棄するとするとなると時期はいつがよいのじゃろう?」
「税金を低めにおさえたいならば、グリーンカードを放棄するのはなるべく年の早い時期がよいでしょう。そうすると1月が最もよいです。」
「グリーンカードの放棄の税金はわかった。その知り合いが今後は放棄後のアメリカの年金の受け取りを心配していてな。税金の申告はどうなるんじゃ?」
「日本居住の日本人の場合、公的年金はアメリカで適切に日本居住の旨をソーシャルセキュリティー事務所に提出していれば、日米租税条約17条により、居住国でのみ課税となります。個人年金、アニュイティも金融機関にForm W-8 BENを提出し適切な処理をしてもらえれば、Form 1099Rは発行されず同様な処理になります。もしも、適切な処理がされずForm 1099Rが発行されている場合にはアメリカの会計士などの専門家に相談することをお勧めします。一方、日本居住のアメリカ人やグリーンカード保持者は、特別でアメリカでも日本でも税務上の居住者になってしまいます。そこで、両国ですべての年金の申告を行い、アメリカでは日本の年金について外国税額をとり、日本の申告ではアメリカの年金について外国税額控除をとることになります。」
「複雑じゃのう。じゃが、言われた通り伝えておく。ありがとう。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saikos.com, info@saikos.com):齊藤幸喜