税金相談室
2000年9月20日 16:00:00
グリーンカードとアメリカ市民権
Q:わたしは、グリーンカード(永住権)保持者です。
アメリカの市民権を取得するのと、しないとでは、税金上、どのような違いがあるのでしょうか?
A:アメリカの所得税法上、グリーンカード保持者は居住外国人とされ、米国市民と同様の扱いを受けます。毎年、全世界所得を報告して確定申告する義務があること、所得調整控除、項目別控除、概算額控除、人的控除を取れることなど米国市民とまったく同様な方法で所得に対する課税を受けます。
贈与税と遺産税の適用では大きく違う
大きな違いは、アメリカの贈与税(Gift Tax)と遺産税(Estate Tax)が適用上生じます。
アメリカ市民である場合、配偶者間の贈与および相続は、贈与税も遺産税も一切関係なく非課税となっています。
税法上、婚姻控除(Marital Deduction)と呼ばれ、法的婚姻関係にある夫婦間の財産移転は、生前、死亡時を問わず、税金が一切かからずに行うことができるという規定です。
この規定は財産の贈与および相続を受ける配偶者の国籍がアメリカである場合にのみ適用されます。贈与する側、遺産を遺す側の配偶者がアメリカ人であろうが、グリーンカード保持者であろうが一切関係ありません。
日本の法律では、夫婦間の相続は配偶者以外の人への相続よりも非課税分が多額に認められています。
しかし、まったく税金がかからず夫婦間の財産移転ができるアメリカと比べると、制限のある日本の方が税負担が重いわけです。
グリーンカード保持者も含めて市民以外の配偶者への贈与については、特別の非課税枠が規定されており、その額は年間10万ドルとなっています。
相続を受ける配偶者がグリーンカード保持者である場合、一定非課税枠までの遺産は課税されませんが、超過額は遺産税がかかります。
遺産税の非課税枠は表の通りです。
配偶者がアメリカ市民の場合は、贈与も相続も全面的に非課税であるため、この遺産税の非課税枠(2006年以降100万ドル)は、子や孫などの相続にのみ適用するのに対して、配偶者がグリーンカード保持者の場合は、この非課税枠を適用しなければなりません。
この観点からは、現在の贈与税・遺産税法上、既婚者の場合、グリーンカードよりもアメリカ国籍の方が有利といえます。ただし、次期大統領が共和党から選ばれた場合には、遺産税の廃止もあるため、もう少し様子を見て行動することが勧められます。
<アメリカ遺産税の非課税枠>
被相続人の死亡年度:遺産税の非課税枠
1999年:65万ドル
2000年、2001年:67万5000ドル
2002年、2003年:70万ドル
2004年:85万ドル
2005年:95万ドル
2006年以降:100万ドル
KPMG特別顧問、米国公認会計士 大島襄
著者略歴:東京都出身。青山学院大学、ニューヨーク大学大学院卒業。MBA(経営学修士)、CPA(米国公認会計士)。KPMG LLP特別顧問。著書に「Q&Aアメリカの税金百科」(共著)、「アメリカ税金の基礎知識」あり。