会計相談室
2023年7月21日 16:00:00
アウトソーシング
「譲謙(ゆずけん)さんや、最近アウトソーシングで人を雇ったんじゃが、何か必要な手続きがあるかのう?」
会社経営者の鬣(たてがみ)が会計コンサルタントの譲矢健吉(ゆずりやけんきち、通称;譲謙)におもむろに尋ねた。「そうですね。いろいろとあります。」
「それはなんじゃ?」
「まず、アメリカ国内の人か国外の人かによって手続きが異なってきます。」
「そうか、実は国内と国外の両方にいるんじゃが、両方のケースについて教えてくれんか?」
「はい、わかりました。まずは共通事項の説明をします。アウトソーシングは業務委託ですので、日米どちらでも業務委託契約書が必要になります。業務委託契約書では、業務内容や対価の支払い方法、期日などの条件を記載します。最終的には委託者と受託者がそれぞれ署名と日付を記載し、それぞれが保持することになります。」
「そもそも雇用契約と委託契約はどこが違うんじゃ?」
「雇用契約と委託契約との違いは、雇用契約は使用者側に仕事の指示管理を行う権限があり、労働者側には裁量権がないということです。委託関係では、契約当事者は全く独立であり、委託者の指図に従う義務はなく、受託者は自分の裁量で仕事をすることができます。すなわち、受託者は自分の好きな時間で働くことができ、自分の意思で請求書を委託者に出すことができることになります。」
「ほう、裁量権があるかないかで、雇用か委託かに分かれるわけじゃな。」
「そうです。しばしば、これはコントロールということばでも表現されています。どちらかにコントロール権があれば、雇用契約、コントロール権が双方になければ、委託契約になります」
「わかった。それじゃ、具体的に委託契約で必要な手続きはなんじゃ?」
「まず、アメリカ国内での委託契約の場合ですが、相手からForm W-9 (Request for Taxpayer Identification Number and Certification)を入手しておく必要があります。」
「W-9とはなんじゃ?」
「W-9は相手のIdentification Numberを知るためのフォームです。支払い相手が個人の場合にはソーシャル セキュリティ ナンバーや個人納税者番号 (ITIN)になります。ビジネスの場合には、Employer Identification Number (EIN)になります。そして、W-9には、受取人が、個人なのか、株式会社なのか、LLCなのかなどの情報も記載します。」
「なんでW-9が必要なんじゃ?」
「アメリカ国内で委託業務をした場合、支払金額が$600以上になると委託者は相手にForm1099(支払調書)を発行する必要があります。Form1099を作成するためにW-9が必要になるからです。」
「それじゃ、外国に委託した人に委託料を支払う場合は、何が必要じゃ?」
「もしも、受託者が海外に住んでいて、海外で受託した作業をしていた場合には、海外源泉所得であるので、何らレポートを発行する義務も源泉徴収する義務もありません。」
「ほう、それは簡単じゃの。よかった。ありがとう。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜