会計相談室

2022年6月24日 14:00:00

その他の包括利益

Inage Hawaii

「その他の包括利益とはいったいなんじゃ?」会社経営者の鬣(たてがみ)が会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称:譲謙ゆずけん)におもむろに聞いた。「会社の利益の一部です。」「利益は収益から費用をひいたものじゃろ?」「そうですが、それは厳密にいうと当期利益といいます。当期利益は会社の努力の結果生まれてくる利益です。その当期利益以外の利益をその他の包括利益といいます。」「それじゃ、会社の利益には努力した利益と努力していない利益があるということか?」「そうです。それらを全部合わせた利益を包括(合わせた)利益といいます。」「しかし、努力しないで得られるという“その他の包括利益”とは具体的に何なんじゃ?」「その他の包括利益とは、簡単に言うと自分の意図しないところで得られた時価の変動による利益または損失です。まず、①債券投資への未実現利益があります。」「なんで、債券投資にその他の包括利益があるんじゃ?」「債券投資には投資目的、満期まで保有する目的、そのどちらでもない投資に分けることができます。その目的のはっきりしない投資も貸借対照表上は時価で計上しなければなりません。その結果生じる時価の増減はその他の包括利益になってしまいます。」「ちょっと前までは、株式(持分)投資にも同様なその他の包括利益が存在していましたが、現在の会計基準では全て当期利益に含まれるのでなくなりました。」「2番目はなんじゃ?」「次に②外国子会社の連結時の為替換算調整勘定という為替換算による差額です。」「なんじゃそれは?」「外国子会社の決算書が外国通貨で作成されていた場合に本社ではドル建てに直さないと連結ができません。その換算替えが貸借対照表では、資本以外は期末時の換算レートで行うのに対し、損益計算書は取引時の換算レートで行うため、貸借が合わなくなります。その差額を為替換算調整勘定といます。企業努力とは全く関係ない連結作業中に出てくる為替調整の差額であるため、その他の包括利益になってしまいます。」「3番目はなんじゃ?」「次は③ペンション(年金)に関わるゲインとロスです。」「それはなんじゃ?」「年金には確定拠出型と確定給付型があります。確定給付型年金の場合には、年金資産の運用を行いますが、その時価が変動することによって予測支払額と実際の支払額に差額が出ます。その差額がその他の包括利益となります。さらにペンションプランの変更によって生じる追加のコストやクレジットも含まれます。」「他にあるのか?」「④そのほかは持分法を適用している投資先にその他の包括利益がある場合、それを持分法によってピックアップした場合には、それも、その他の包括利益になります。最後に⑤デリバティブ資産負債は時価評価しなければなりませんが、時価の変動のうち当期損益に入れないヘッジ損益を繰延ヘッジ損益と言い、その他の包括利益に計上することになります。ちなみに①と③はたとえ実現してもIFRS(国際会計基準)では当期利益には含まれません。」「そうか、よくわかった。当期利益以外に5つのその他の(包括)利益があるということじゃな。ありがとう。」


米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saikos.com):齊藤幸喜