会計相談室
2024年4月5日 13:00:00
Payroll
「譲謙(ゆずけん)さん、リモートワークをしている従業員がおるんじゃが、どこで給与税をはらわなあかんのか教えてくれんかの?」会社経営者の鬣(たてがみ)は会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち、通称;譲謙)におもむろに聞いた。
「たしかに昨今の働き方として、会社のある場所以外の州に住んでいる従業員を雇っていることがよくあります。いわゆるリモートワーカーです。」
「そうじゃ、そんな時はどうしなければならないんじゃ?」
「原則として、その従業員が住んでいる州で連邦税と州税を源泉徴収しなければなりません。」
「そうすると会社はその州で源泉徴収のための登録をしなければならないのかのう?」
「はい、その通りです。さらに、州の労働局にも登録が必要です。」
「何、そうするとその州の最低賃金やDisability Insurance やWorker’s compensationの規則もその州の規定に従わなければならないのかのう?」
「はい、その通りです。」
「それは厄介じゃのう。何かいい方法はないか?」
「特定の州間では給与税についてReciprocal Agreement(相互協定)というものが結ばれていることがあります。」
「なんじゃそれは?」
「互恵協定とよばれることもあります。」
「相互協定がある場合には、その従業員については、住んでいる州でのみの源泉徴収になります。その場合には、従業員は非居住証明の提出が必要になることがあります。」
隣同士で州を越えての通勤を想定しているので、近隣の州同士が多いです。給与税の相互協定を結んでいる州は次のようになっています。AZ-CA-IN-OR-VA, DC-MD-VA, IL-IA-KY-MI-WI, IN-KY-MI-OH-PA-WI, IA-IL, KY—IL-IN-MI-OH-VA-WV-WI, MD-PA-VA-DC-WV, MI-IL-IN-KY-MN-OH-WI, MN-MI-ND, MT-ND, NJ-PA, ND-MN-MT, OH-ID-KY-MI-PA-WV, PA-IN-MD-NJ-OH-VA-WV, VA-KY-MD-PA-DC-WV, WV-KY-MD-OH-PA-VA, WI-IL-ID-KY-MI。」
「すごいな。」
「ちなみに州税自体がない州もあります。アラスカ、フロリダ、ネバダ、ニューハンプシャー、サウスダコタ、テネシー、テキサス、ワシントン、ワイオミングの各州です。」
「ニューヨーク州やコネチカット州には、特別な源泉徴収のルールがあると聞いたんじゃが、本当か?」
「はい、Convenience of the Employer Ruleというものがありまして、これらの州は、会社のある州でのみ源泉徴収をすればよいことになっています。」
「それば楽でよいのう。」
「そうなんです。ニューヨーク州やコネチカット州の他、デラウエア州やネブラスカ州、ペンシルバニア州でも採用しています。最近ではニュージャージー州もこのルールを採用しました。」
「なんか、給与の源泉徴収は面倒くさそうじゃが、適法に行わないとな。ありがとう。」
「どういたしまして。」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜