税金相談室
2002年8月5日 22:00:00
LLC有限責任会社の株主の課税
Q: LLC(リミテッド・ライアビリティー・カンパニー)の出資者は、どのような課税を受けるか教えてください。 A:パートナーシップと法人の特長を兼ね備えた米国内の事業組織の形態がリミテッド・ライアビリティー・カンパニーすなわちLLC有限責任会社です。LLC有限責任会社の設立は、アメリカの50州およびワシントンDCのすべてにおいて認められています。当該LLC会社法の内容は州によって異なるものの、次の共通点があります。 1. 出資者はメンバー(構成員)と呼ばれ、有限責任を負う。 2.LLCの出資者(構成員)の人数には制限が設けられていない。 3.LLCの存続期間は有限とする。一般に最長30年。 4.LLC出資者(構成員)の死亡および脱退は、LLCの解散原因となる。 5.LLC出資者(構成員)の持分は一般に譲渡可能ではあるが、持分の譲渡を受けた者が経営参加の権利を有するとは限らない。 LLC有限責任会社は、税法上パートナーシップと同様の課税形態で課税を受けることが可能です。すなわち、パートナーシップの純利益は組織段階での課税ではなく、各パートナーが持分利益に対して出資者パートナーの段階で課税を受けます。 また、LLC有限責任会社も選択により、純利益、損失、控除などを出資比率に基づいて各出資者に割り当てることができ、出資者の段階で個人所得税または法人税が課されます。すなわち、選択により、LLC有限責任会社自体は独立した課税主体として扱われず、パートナーシップの場合と同様、組織と出資者に対する二重課税を回避することができます。 LLC有限責任会社をパートナーシップおよびS法人(株主課税法人)と比べると、LLC有限責任会社とS法人の株主は有限責任を負うのに対して、パートナーシップの一般パートナーは無限責任を負います。すなわち、会社の経営に参加する際、出資者個人の財産によって会社の負債の責任を負う必要がないということです。 出資者の人数に関して、LLC有限責任会社とパートナーシップの場合は無制限であるのに対して、S法人の株主は75人までという制限が設けられています。 組織の存続期間については、LLC有限責任会社およびパートナーシップは有限であるのに対して、S法人は永久存続が可能です。 設立条件に関しては、S法人の場合は、①出資者の人数75人まで、②株主は個人(または遺産財団、特定信託)であること、③非居住外国人、法人、パートナーシップでないこと、④発行株主は1種類であることという大幅な制限が設けられています。 それに対してLLC有限責任会社の設立条件は、出資者の人数は無制限、法人、パートナーシップ、非居住外国人も株主になることが可能であり、発行株式は2種類以上でもよいとなっています。 日本の居住者(アメリカの非居住外国人)または日本法人が、アメリカのLLC有限責任会社の出資者である場合、米国側ではほかの出資者と同様に、純利益、損失、控除などの出資比率に基づく持分金額を報告して確定申告する義務があります。 日本側では、LLC有限責任会社からの利益分配を受けた場合にだけ、海外からの所得として申告することになります。 米国公認会計士 大島 襄会計士事務所所長 大島襄