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会計相談室

2009年5月16日 13:00:00

現金預金の不正取引の代表的な手口(1)

Inage Hawaii

Q. 不正取引とはどのようにして行われるのでしょうか?例をあげて教えてください。


A. 今回からまず現金預金の不正取引の代表的な手口を紹介したいと思います。


現金預金(以下、現金)は従業員によって最も不正が行われやすい資産のひとつです。多くの手口は、帳簿を通さない(off-book fraud)不正です。帳簿を通さない不正は、発見を難しくしますが、注意深く観察することによって、兆候に気づくことができます。


I 資産の横領にかかわる現金の不正:

①スキミング(Skimming):現金売上が帳簿に記帳される前に現金を抜き取ってしまう不正取引です。スキミングでは、現金売上の領収書がまったく会計帳簿に現れません。この不正は、現金取引が主な商売での典型的な不正の例です。


②アンダーリング(Under-Ring):スキミングに似た不正の手口ですが、売上元帳の記録上の売上げ金額を実際の売上の金額より少なく記録する不正取引です。実際の売上金額と現金売上元帳との差額の現金を流用します。これも、現金商売に典型的な不正取引で小切手やクレジットカードの商売では起きません。


③売上取消と売上返品:売上取消取引と売上返品による不正取引は、A)売上をいったん、計上し、その取引を取り消し、その取り消した金額をレジスターから抜き取る不正とB)商品を知り合いに従業員割引で販売し、その返品を割引を考慮しないで全額返金する不正取引があります。


④偽返金取引と偽割引:従業員が返金取引や割引を不正に行う取引です。例えば、返金処理を行ったにも関わらず、実際の返品を受け取らなかったり、従業員が承認なしの割引を行う取引です。


⑤小切手と現金の交換:従業員が、キャッシュレジスターの中の現金と自分の個人の小切手とを交換する不正取引です。会社では記録上、現金の増減がありません。古い小切手は定期的に新しい小切手と交換していきます。この交換取引は、実質的には会社からの未承認の借入金取引です。小切手と現金の交換取引を防ぐには、会社のポリシーによって、キャッシュレジスターは毎日締めを行い、現金の残高は、現金管理者にいったん、預けるか銀行に預けることにすれば防ぐことができます。


<不正が起きている兆候>

上記の現金の横領事例では以下のような兆候がみられます。


  • 現金売上金額や領収書の金額が通常考えられる取引金額と異なっている

  • 現金の入金金額が通常考えられる取引金額と異なっている

  • 棚卸資産の残高に差額が生じている

  • 小切手売上やクレジット売上の推移には変化がないのに現金売上だけが落ち込んできている

  • 顧客のクレーム

  • 売上総利益の減少

  • キャッシュレジスターが故障または破損している

  • 異常な量の売上取消や返品が計上されている

  • 日々のキャッシュレジスターの売上テープに異常な動きが見られる

  • 実際の売上価格と社内で決めた販売価格に乖離(かいり)が見られる



II 財務諸表の虚偽にかかわる現金の不正:

①恣意(しい)的な現金口座の締めの遅れ:売上の早期計上を行い、費用を繰り延べるため恣意的に締めを遅らせる不正が考えられます。


②カイティング(Kiting):カイティングは、実際に存在しない、または、入金途中の現金をいかにも銀行口座に残高があるかのように見せる不正取引です。


③未渡し小切手の不適切な処理:発行したが、未だ相手に渡していない小切手は、買掛金処理をしなければなりませんが、買掛金に振替えていない処理です。


齊藤幸喜

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