税金相談室
2007年4月20日 22:00:00
新社会人の税務
質問:今年5月、大学を卒業して就職し、6月から給料を受け取り始めました。社会人として今年初めて税務申告をしますが、注意点を教えてください。
答え:社会人となってからの給与収入は、学生アルバイト収入よりも金額的に高く、以前よりも節税対策に関する知識を必要とします。将来はさらに結婚、貯蓄、家の購入、投資、子供の教育、引退、贈与、相続など、より高度な税金問題に次々と直面することになるため、早くから節税の素養を身に付けておくことが勧められます。税金の知識を持って行動するのと、知らずに行動するのとでは大きな違いがあります。せっかくの節税チャンスを逃した場合、後からでは取り返しがつきません。税務署は所得の申告漏れや不適格な控除に対しては間違いなく追徴ノーティスを送りつけてきますが、税金の還付となる筈の控除を忘れて申告書を提出しても決してそれを教えてはくれません。知識と経験の豊富な専門家に相談する場合でも、相談者に問題意識がある方がより効果的に解答が得られます。
税金を減らす要素として、経費控除の増加、税額控除の増加、非課税所得の増加、税率の削減、課税時期の遅延などがあります。以下、新社会人の節税対策として考えられる項目を検討します。
●学生ローン支払利子の控除
学費のために借り入れた学生ローンの返済額の中に含まれている支払利子は、税金計算上、年間2,500ドルまで「所得調整控除」が認められます。「所得調整控除」であるため、項目別控除あるいは概算額控除のいずれの控除方式を選択した場合でも、学生ローン支払利子の控除が認められます。ただし、高額所得者は控除が制限されます。すなわち、所得が独身5万ドル、夫婦合算申告10万ドルを超えると、控除額は段階的に減額し、独身6万5000ドル、夫婦合算申告13万ドルに達すると控除額はゼロとなります。
●学生ローン債務免除
債務免除を受けると、免除額は当該年度の課税対象所得となるというのが、税法上の原則です。通常、学生ローンの債務免除もこの原則に従い課税対象所得となります。例外措置として、政府から支給された学生ローンであり、一定条件を満たした場合は、債務免除の所得として認識の必要がないという規定があります。例えば、医師の資格を取得して5年間以上辺境地域の医療に携わる場合、大学卒業後の一定期間都市スラム地域またはアメリカ・インディアン居留地の学校教師として勤める場合などがこれに該当します。
●教育費控除
卒業後も母校や他大学の授業を受け続ける場合があります。その教育費については、税額控除、所得調整控除、項目別控除、あるいは自営業の事業所得控除のいずれかの控除が認められます。
(1)生涯学習税額控除
大学、大学院、専門学校などの授業料、登録料等について最高1万ドルまで、ただしその20%(2000ドル)が税額控除の形で納税者への還元が認められます。学位取得目的でも単位取得だけの勉学でもかまいません。調整総所得が独身4万2000ドルと5万2000ドルの間(夫婦合算申告8万5000ドルと10万5000ドルの間)で、税額控除額がゼロに至るまで段階的に減額します。
(2)所得調整控除
所得が高いために(1)の生涯税額控除が制限された場合、そのかわりに所得調整控除を選択することも可能です。授業料、登録料等のうち最高4000ドルまでの控除です。ただし、調整総所得が独身6万5000ドルと8万ドルの間(夫婦合算申告13万ドルと16万ドルの間)で、所得調整控除額がゼロに至るまで段階的に減額します。当規定は、2005年までの時限立法であり、2006年以降は廃止となります。
(3)項目別控除・事業所得控除
項目別控除または自営業の事業所得控除として教育費を控除することもできます。この場合の教育費には、授業料、教材費、交通費が含まれます。ただし、現職の知識や技能の維持、向上に役立つ費用だけが適用され、卒業後または終了後、新しい職業に就職できる教育費は控除できません。
●勤務活動経費の控除
勤務活動の一環として支出した経費が項目別控除の対象となります。ただし、上記(3)も含む合計額が、調整総所得の2%を超える部分が実際の控除金額となります。職業新聞、ニュースレター、専門雑誌購読料、職能協会会員費、組合費、職業ユニフォーム代(ヘルメット、保護ゴーグル、安全靴、白衣を含む)が控除の例です。
会社によっては、401(k)プラン退職基金積立による免税貯蓄(年1万3000ドル)、免税駐車代(月195ドル)、免税通勤費(月100ドル)、免税グループ生命保険(上限5万ドル)、免税教育費補助(年5250ドル)、免税子女世話費補助(5000ドル)などの税恩典制度を提供している場合もあります。括弧内は2007年の金額です。2008年以降増額予定です。