会計相談室
2009年3月17日 13:00:00
公正価値評価基準とは
Q:公正価値評価基準が2008年度の財務諸表から適用されると聞きました。どのようなものでしょうか?
A:公正価値はさまざまな米国会計基準書のなかで使われていますが、時に矛盾した意味で使用されている場面がありました。この矛盾点を解決するためにFASB159(金融資産と金融負債に対する公正価値オプション基準)が2007年2月に公表されました。
会社の資産と負債は昔から購入原価で測定されていました。なぜならば、支払った金額が最も確実に金額を測定できる方法だったからです。それが、購入原価よりも時価が下がった場合には時価まで評価を落とすという低価法の適用が始まり、最近では簿価が時価を下回った場合には減損のテストが要求されるようになってきています。
米国会計基準(SFAS)第157号では公正化価値とは「市場の参加者が特定の資産または債務につき最も参加者の多い市場で決済日における最も有利に売ることのできる資産の価格または最も低い価格で債務を委譲できる価格」をいいます。
公正価値は市場が決めるものであり、企業が独自の方法で決めるものではありません。
市場参加者とは、公正価値を測定しようとしている企業とは独立していて資産と債務につき全ての入手しうる情報を合理的に理解し、資産と債務の取引を行える能力があり、かつ、取引を行おうとしている者をいいます。
SFAS第157号は2007年11月15日後に始まる決算期から適用されています。SFAS第157号はSFAS第123号株式ベースの報酬には適用されません。
公正価値の測定手法には次の3つのレベルがあります。
レベル1-特定の資産や債務が活発に取引がされている市場の公開価格。
レベル2-レベル1が存在しない場合における資産および債務に関する直接的または間接的な観測しうる価格情報。
レベル3-観測可能な資産または負債に関する情報や市場がない場合で観測することが不可能な場合の価格情報の3つになります。
SFAS第157号によるとレベル1の活発に取引がされている市場の公開価格が最も信頼できる公正価値だと言っています。したがって、それが入手可能ならば、必ずそれを使用すべきだと言っています。
レベル2は、以下のようなケースです。
①類似した資産や債務の取引がレベル1のような活発な市場で行われている場合、類似した資産や債務の公開価格
②資産や債務の取引が活発に取引されていないが、過去に成立した市場取引がある場合には、その公開価格
③市場による公開価格以外の客観的に測定可能な価格情報、例えば金利
④市場のデータと相関関係にある観測可能な価格情報
レベル3はレベル1と2が不可能な場合にのみ使用されます。また公正価値を測定するために入手可能な情報を使用し、企業の独自の前提条件を用いて、市場参加者が資産や債務の価格を決定するような方法で価格を決定することになります。 主にレベル3に当てはまりますが、公正価値の測定手法は評価方法であるマーケットアプローチ、インカムアプローチやコストアプローチと首尾一貫していなければなりません。マーケットアプローチでは市場での取引の同一性または類似性のある資産または債務の価格が使用されます。インカムアプローチでは将来のキャッシュフローや将来の利益を基にして公正価値を測定します。コストアプローチでは、ある資産を買い換えるためには現在いくらのコストがかかるかを測定します。 FASB第159号では、現行の会計基準で公正価値による測定が要求されていない財務項目に対してまで公正価値で測定することを許容するオプションを企業に与えました。 さらに同様な資産や負債に対して異なった測定方法を採用している企業の比較可能性を維持するために表示方法と開示方法を改善しました。適用は項目ごとに行われ、いったん適用するとその後の変更は不可です。適用科目全体に適用され、特定のリスクやキャッシュフローにのみ適用されることはありません。
すべての企業は、次の項目に公正価値オプションを選択できます。
①金融資産、金融負債
②撤回不可能な約束
③書面による債務の約束
④金融項目以外の保険契約上の権利や義務
⑤金融項目以外の保証契約上の権利や義務
逆に選択不可能な項目は次の通りです。
①連結対象の子会社
②連結対象の変動持分
③従業員年金制度の雇用者と年金プランの義務
④リース契約上の金融資産および金融負債
⑤預かり金
⑥株主資本です。
資産と負債が公正価値で測定された場合、2つの方法の開示が認められています。
①貸借対照表(B/S)では、公正価値と非公正価値を同じ欄で合計金額を載せ、詳細を注記で開示する方法と
②2つの違う欄で公正価値と非公正価値を載せる方法です。
B/Sの注記では次の項目の開示が要求されています。
①経営者が公正価値オプションをそれぞれの科目に採用した理由
②もしも公正価値オプションが類似した項目の中で選択的に適用されていた場合、その理由とそれら選択適用している項目の違い
③長期債権と長期債務につき公正価値の合計と未払元本部分の合計の差額
④ローン債権を資産計上している場合に当該資産について公正価値評価した場合に90日以上超過した部分の公正価値
一方、損益計算書(I/S)では以下の注記の開示が必要です。
①利益の中に含まれている公正価値の変化によるゲインとロスの金額
②利息と配当がどのようにして測定され、どこに計上されているか
③ローン債権とその他の債権が資産として計上されている場合の予想ゲインとロスの金額
④クレジットリスクの大きな変動のために生じた負債の公正価値の変動金額
SFAS第159号の適用日は2007年11月15日後の決算期からになります。
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saitollp.com, info@saitollp.com):齊藤幸喜