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会計相談室

2008年10月6日 13:00:00

デリバティブ 3

Inage Hawaii

Q. 外国為替の変動に対して将来の不測の事態を回避するためにデリバティブ取引を使ってヘッジをするつもりです。アメリカの会計ではデリバティブはどのような会計処理を行わなければならないのでしょうか?


A. デリバティブの定義と3つのヘッジ取引の種類①公正価値ヘッジ、②キャッシュフローヘッジ、③為替リスクヘッジについて前々回で解説しました。今回は外国為替の具体的な会計処理について説明したいと思います。


<1>商品購入の例:

① 元商品:2008年4月1日に商品¥100,000を円建てで購入。2008年9月30日に支払および決済予定、購入日の直物為替換算レートは$=¥130。同時に9月30日決済日の為替先物買い予約を$1=¥125で¥100,000分行う。

② 会社の決算日:2008年6月30日、為替換算レート$1=¥120(直物)$1=¥110(先物 決済日2008年9月30日)

③ 2008年9月30日の為替レート:$1=¥100


この場合、円建ての外国為替(元商品)は、すでに会社の貸借対照表(Balance Sheet=B/S)に記載されていますので、将来の公正価値の変動についてリスクを負っています。このリスクをヘッジすることを公正価値ヘッジ(Fair Value Hedge)といいます。会計上の取り扱いですが、デリバティブの貸借対照表表示は公正価値(Fair Market Value=FMV)で行うことになっています。デリバティブの公正価値とは含み損益のことをいいます。


設例では決算時に先物買い予約が$109(=¥100,000/125-¥100,000/110)の含み益を抱えていますので、B/Sの資産側にデリバティブ資産が計上されます。一方、損益計算書(Income Statements=I/S)につきましては、ヘッジを行うのか行わないのか、あるいはヘッジとして認められるのか否かで取り扱いが異なります。


ヘッジ会計を行っている場合には、元商品の損益とデリバティブ損益は同じ期間にI/Sに計上されることになります。もしも、両者の損益が違う期間に発生した場合には、デリバティブの損益は、一旦、その他包括利益として資本の部に計上されることになり、その後、ヘッジ対象の損益が計上されるのと同じ期間に損益がI/Sに計上されることになります。


したがって、上記の例では、ヘッジ会計を行っていない場合、ヘッジ対象の外国為替の損失$64 (=¥100,000/120 - ¥100,000/130) を損益計算書に計上し、デリバティブ利益$109がI/Sに計上されることになります。ヘッジ会計が認められた場合、ヘッジ対象の外国為替の損失$64とデリバティブ利益$109は、それぞれ、その他の包括利益(Other Comprehensive Income)として資本の部に計上されます。為替予約時の直物と先物の差額 $31 (¥100,000/130 - ¥100,000/125) は期間償却を行い$15 ($31 x 3month/6month) を外国為替差損へ計上するとともにその他の包括利益に計上します。


外国為替の決済日およびデリバティブ決済日には、ヘッジ会計を行っていない場合、ヘッジ対象の外国為替の損失$167 (=¥100,000/100 - ¥100,000/120)を損益計算書に計上し、デリバティブ利益$91 (¥100,000/110 - ¥100,000/100)がI/Sに計上されることになります。


ヘッジを行っている場合、現取引の外国為替損失$167とその他の包括利益の振替による$167がネットされ外国為替差損益は計上されません。為替予約時の直物と先物の差額$31(¥100,000/130 - ¥100,000/125)は残額$16($31-$15)の償却を行い外国為替差損の計上を行います。その他の包括利益$60とデリバティブ資産$109は逆仕訳によって残高が$0になります。外国為替の仕入金額について先物ヘッジを同額で同じ決済日で行う場合、原契約を途中で解約等を行わない限り、ヘッジは通常有効だと考えられます。


<2>商品売却の例:自国通貨が円建ての会社で2008年10月1日に$10,000の売上を計上し、その時の為替レートが$1=¥111だったとします。会社の決算日は11月30日で為替レートが、$1=¥113、決済日が12月31日で為替レートが$1=¥114だったとします。ヘッジ会計を採用していない場合、取引日の10月1日には、売掛金と売上高¥1,110,000(=$10,000 x 111)をそれぞれ計上します。


決算日の11月30日には、売掛金に対して¥20,000 (=$10,000 x (113-111))の為替差益を計上し、売掛金の金額は決算日には¥1,130,000 (=¥1,110,000 +¥20,000)になります。さらに決済日の12月31日には、売掛金は¥1,140,000 (=$10,000x114)で回収することになり、ここでも為替差益¥10,000(=¥1,140,000 - ¥1,130,000)が計上されることになります。


ヘッジ会計が行われた場合でも基本的には、ここまでの記帳方法は同じですが、さらにヘッジ取引が加わることになります。たとえば、先の例に加え9月1日に10月1日の売上取引につきヘッジを行った場合、9月1日の直物レートが$1=110で12月31日の決済日の予約レートが$1=¥110.5とします。ここで、直物と先物に¥5,000(=$10,000x2(=110.5-110))の差がありますが、これを売上金額と為替損益に調整を加えることになります。もしも、この調整金額が、取引時点(9月1から10月1日)までで¥1,250、取引日より後(10月1日から12月31日)で¥3,750ならば、10月1日の売上金額は、¥1,101,250(=110x10,000+1,250)になります。

 

米国公認会計士

大島斉藤会計事務所

齊藤幸喜

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