会計相談室
2019年11月15日 17:00:00
アメリカの訴訟に巻き込まれてしまったんじゃが
「譲矢(ゆずりや)さんや、アメリカの訴訟に巻き込まれてしまったんじゃが、どうすればよいかのう」会社経営者の鬣(たてがみ)は会計コンサルタントの譲矢謙吉(ゆずりやけんきち)におもむろに尋ねた。
「鬣さん、訴訟を起こすには、まず訴訟専門の弁護士に相談をするべきです。弁護士は意思疎通がしやすい方で訴訟専門の方を選んだ方がよいでしょう。どの弁護士と組むかで訴訟のコストと行方が左右されるので弁護士の選定は非常に重要です。」
「ふむ、わしは昔からよく知っている日本語が話せる訴訟専門の弁護士に頼むつもりじゃ。」
「それは大変良いと思います。アメリカの訴訟システムは大変よくできており、公平で正義に基づいた結論に至ることができますが、そのシステム自体を理解することは専門家でない限り不可能です。同じ言語を話す人であれば、理解が早くスムースに進むでしょう。それでなければ必要以上の訴訟費用がかさむことになります。」
「そうか、それで、訴訟は何から始まるのじゃ?」
「訴訟はまず、弁護士に自分の相手に対するクレームを手紙に書いてもらい相手に伝えるところから始まります。Lawyer’s letterとも呼ばれていますが、それで相手がこちら側の話し合いに応じてくれれば、それで解決になります。ここで、解決に至ることが実はお互いに費用を最小限に抑えるポイントとなります。」
「手紙は出したのじゃが、完全に無視されているぞ。そうすると次は何じゃ?」
「次にいくのは民間の第三者機関を使った和解交渉です。これをMediation(メディエーション)といいます。メディエーション機関では元裁判官などの経験豊富な弁護士が仲裁に入ります。ここで、お互いに証拠を出しあい、和解ができれば、それで終了になります」
「結局メディエーションはお互いに主張金額に差がありすぎて不調におわったぞ」
「そうすると裁判に入っていきます。裁判ではDiscoveryというお互いの証拠開示手続きに入っていきますが、これがかなり強力な手続きで社内の議事録からE-mail、取引先とのやりとりまで全てが対象となります。このなかのDepositionでは関係者から直接情報を収集し証拠として採用することができます。」
「ふむふむ、これは訴えた方が有利な気がするがどうなもんじゃ?」
「確かにそのような印象はあります。しかし、最後までいってしまうと全く関係のない陪審員の決定になるので、何ともいえません。それと最後まで行くと訴えている方も訴えられている方もとんでもない多額な弁護士費用になりますので、ほとんどが最後の陪審員の判決に行く前に和解交渉が成立します。」
「そうか、よくわかった。ありがとう」
米国公認会計士齊藤事務所 (www.saikos.com, info@saikos.com):齊藤幸喜